阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2016 07.19

「自立」した人が陥りやすい罠(前篇)

以前の投稿にて,7つの習慣における成長の段階として,「依存」,「自立」,「相互依存」という三段階があるというお話をしました。

簡単におさらいしますと,

「依存」=人生を他人に委ねている状態。自分の喜怒哀楽や,起こった出来事等の責任を他人に(よくも悪くも)預けている状態。

「自立」=自分の人生の責任を自分に置いている状態。自分軸を持っており,人生の舵を自らとっている状態。

「相互依存」=自立した人同士が,お互いの異なる個性を活かし合い,シナジーを生み出している状態。

さて,今日は,『「自立」段階にある人ほど,自らの信じる正義(信念,主義)を他者に求めてしまうという罠に陥りがちである』というお話をしたいと思います。

皆さんは,能力の高い人や,自己概念の高い人(自分に自信を持っている人)から,「あなたはもっとこうすべきだ。」とか,「〇〇という場面では~~という行動をとることが常識だ。」などというように,自分では特に問題と思っていなかったことについて,改善すべきという意見を受けたことはありませんか。

あるいは,逆の立場で,『もっとこういうところを改善した方がこの人にとってプラスになるはずだ。』という思いや,『この人のこういうところは良くない。上司として(友人として,先輩として),間違っているところは指摘してあげなくては。』という思いから,上記のような指摘を他者に対してしたことはありませんか。

私はどちらもかなりありました(苦笑)。特に後者は結構やってましたね~。

さて,上記のような指摘を受けたことがあるという方,意気揚々とその指摘を取り入れて行動改善しようという気になったでしょうか?

もちろん,指摘してくれた人が本当に心から尊敬し,信頼している人なので,自分ではちょっと疑問に思わないでもなかったが,指摘に従ったという人もいるでしょう。

しかし,どちらかといえば,いくら友人や先輩とはいえ,自分でおかしいと思っていないことについて,「あなたは間違っている。」等と指摘されても,それを機に,意欲的に行動改善を進めようと思ったという経験を持っている方は少ないのではないかと思います。

私自身,自分がおかしいと思っていない点について指摘を受けても,「なんでそんなこと言われなければならないのか。」という反発心が芽生えこそすれ,その指摘にぜひ従おうという気にはなりませんでした。

ところが,「自立」状態にある人は,つい,他者に対してこのような指摘をしがちです。

これはなぜでしょうか。

「自立」状態にある人は,自分自身に軸を持っており,自らに自信を持って生きています(※それ自体はとても良いことです)。

また,自分に軸をもって生きていく中で成功体験を積み上げており,その経験を踏まえて,自分なりの正義や,守るべきルールというものを形成している人がほとんどです(※これも,それ自体はとても良いことです)。

そんな状態にある人が,自分の軸から見て正義に反する行いや,守るべきルールを遵守していないという人を見つけると,「このままではその人は失敗の人生を歩んでしまうのではないか。」と心配になります。

そこで,そのような負の未来に至ってしまうことは防がなければならないと考えて,「あなたの〇〇というところはおかしい。改善すべきだ。」という指摘をするという行動へと移るわけです。

つまり,基本的には義憤にかられて行動を起こすわけですね。そして,「自立」状態にある人なので,行動力もあるため,思い立ったら即行動に移るというパターンも多いわけです。

しかし,これは残念ながら「相互依存」へと至る道のりではなく,また,「依存」状態にある人を「自立」状態に引き上げるのに有効な手立てでもありません。

明日の後編では,どうしてこのような行動が「罠」なのか,具体的に考察を深めていきたいと思います。お楽しみに!!