阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2016 07.14

目的達成に対する効果性を考えることの重要性

人の行動には全て,何かしら達成したい目的があります。

ただ,人は往々にして,その目的を忘れて(あるいは意識せず),目的の達成に対する効果性を考えずに行動することがあります。

例えば,自分の尺度で見た時に,間違った行動をとっている人がいた時に,その人に対して,

「なんでそんなことをするのか。」とか,「もっとこうするべきだ。」というように,詰問したり,叱ったり,非難したりする場面は,どこにでも溢れていますよね。

さて,そこで考えてほしいのが,「そもそもなんのために相手を詰問したり叱ったり非難したりしているのか」ということなのです。

つまり,行動の「目的」ですね。

上記の行動の目的は,一般的には,間違った行動を改善してほしいと望む相手(上司,同僚,部下,家族,友人…etc)に対して,まさに行動を改善してもらうことにありますよね。

(たまに,単に相手を詰問したり叱ったり非難することで快感を感じるので,それが目的なんだという人がいますが,例外的な話なので,ここでは触れません苦笑)

では,上記の行動は,そのような目的を達成するためにもっとも効果的な行動といえるでしょうか。

このような効果性を考えるうえで基本となるのは,「(そのような行動をとられたら)自分だったらどう思うか。」を考えてみることです。

さて,あなたが相手方の立場だったら,自分としては間違ったことをしたという意識はないのに,「なんでそんなことをするのか。」と詰問されたり,「あなたの行動はおかしい。もっとこうするべきだ。」などと叱られたり非難されたりしたとして,その人の言うとおりに行動を改善したいと積極的に考え,具体的に行動に移そうと思うでしょうか。

『自分だったら,そういう風に言われたら,すぐに行動を改善しようと考えて行動に移す』という方は,それはそれでいいと思います。そこの価値判断は人それぞれなので。

ただ,上記の例でいえば,詰問されたり叱られたり非難されたりした場合は,「なぜ自分がそんな風に言われなければならないのか。」という憤りや戸惑いを感じ,行動を改善しようなどとは思わないという人が多いというのが実際のところかと思います。

そうであるならば,相手に行動を改善してほしいという目的との関係で,詰問,叱責,非難といった行動は効果的ではない,と考えることができます。

これはあらゆる場面において同様のことがいえます。

例えば,私はよく交通事故の被害者側の賠償請求に関するサポートというお仕事をしているのですが,被害者の方がご相談にいらっしゃった動機として,「相手方の保険会社担当者の態度が腹立たしくて,到底相手の提案なんて受ける気になれなかったし,電話で話すだけでもイライラするので,弁護士さんに任せたいと思いました。」というようなものがよくあります。

交通事故賠償の場合,相手方の保険会社さんからすれば,正直な話,できる限り少ない賠償金額で被害者が納得してくれるに越したことはないわけです。

そうだとすれば,被害者が弁護士に相談しようと思うきっかけになるような行動はせず,逆に,保険会社の提案を受け入れてもいいかと思ってくれるような行動をとる方が,「なるべく少ない賠償額で示談を終わらせたい」という当該保険会社の目的に対して効果的といえますよね。

ところが,実際上は,そのような目的に対する効果性を考慮せず,被害者に対して高圧的な態度をとったり,自分たちの主張内容は当然に認められるものであることを前提としているかのような態度をとってしまうと,結果として,交渉は長引く上に,賠償金も増額になることが多いわけです。

これって,完全に本末転倒な感じですよね。

皆さんはそんな状態とならないよう,常に,目的との関係でどのような行動が最も効果的かという視点を持つようにしましょうね!!