阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2016 07.15

大事なことは相手にしゃべってもらおう!①(部下に対する効果的指導編)

皆さんは,誰かに行動改善を促したいときに,つい,「もっとこうした方が良いと思う。」というような言葉を投げかけることはありませんか。

私はつい最近までけっこう使っていました(苦笑)。

今日は,人に行動改善を促したいときには,核心部分について相手にしゃべってもらう(あるいは考えてもらう)ことが大事というお話です。

例えば,思うように成果が上がらない部下がいた時に,「もっとこういうことをしたら良いのではないか。」と,自分のノウハウや成功体験に基づいてアドバイスをするような場面って,よくありますよね。

もちろん,部下自身が,「〇〇さんのノウハウやご経験を参考にしたいので,ぜひ教えてください!!」と言って情報提供を求めているのであれば,そのようなアドバイスは効果的といえるでしょう。

ですが,そのように情報提供を求めている状況ではない場合,成果が上がっていないという事実だけを基にして,「こういうところが足りないのではないか。もっとこうしたらどうか。」というアドバイスをされても,部下はすぐに行動に移るでしょうか。

おそらく,すぐにアドバイスを実践して成果を上げるという部下は非常に稀ではないかと思います。

それに,そもそも,そのようなアドバイスを即座に受容し,迅速に行動に移ることができるほどの能力やエネルギーを持っている部下であれば,思うように成果が上がらないということはほぼないと思います。

こういう時は,まず部下自身に,どんな行き詰まりを感じているのか,結果が出ないことについて自分としてはどう思っているのか,そもそもどんな思いで仕事に取り組んでいるのか,何のために仕事をしているのかなどなど,仕事の成果を上げる方法を考える上で重要となる情報をしゃべってもらうことが非常に効果的です。

皆さんもご経験があるかと思いますが,人は,誰かに話を聞いてもらうために自分の考えていることを言葉にして発していると,きちんと自分の考えていることを伝えようとして,自分の頭の中を整理してから言葉に出そうとします。

つまり,人は誰かに自分のことを説明しようとすればするほど,自分の考えていることや,困っていること,葛藤していることなどについて整理が促進され,結果として,自分でもより明確に認識できるようになるのです。

ちなみに,これは,自分の考えていることを誰かに伝えるために文章にするという作業においても同様の現象が起きます(私がこうしてブログを書いているときがまさにそうです。)。


人は,自分自身の力で困難に打ち勝った時に,初めて大きく成長します。なぜなら,困難に打ち勝つために,自ら知恵を絞り,ひねり出したアイデアに基づいて自ら行動するという経験を積むことができるからです。

また,人は,誰かに言われた場合よりも,自分自身でその重要性に気づいた場合の方が,問題解決のための行動に移りやすいという心理傾向があります(少し難しい表現をしましたが,要は,誰かに強制されるよりも,自ら望んで自発的にやることの方が意欲的になれるという話です。)。

そうであるならば,部下に成長してもらいたいと思ったら,問題解決のために必要なことを,可能な限り自ら考えに考えぬいてもらうことが非常に重要になります。

ですから,部下の成長を効果的に促すために上司がすべきことは,部下自身にしゃべってもらって,自ら考える作業の手助けをすることなのです。

その過程で,部下が,自分自身のアイデアを見つけるヒントとして上司の経験やノウハウについて聞きたいと望んだときに初めて,情報提供をしてあげればよいのです(但し,調子に乗って語りすぎるのはダメですよ笑)。

そうでない時には,上司の経験等は一切語らず,ひたすら,考えるヒントとなる問いを投げかけることで,部下の考えを広げたり,気づきを促してあげることに終始すべきです。
(そういう意味で,いわゆる質問力という能力は重要になりますが,それについてはまた別な機会にお話しします。)

以上のような考え方に対しては,「そんな面倒くさいことやってられない。部下がわかってないなら,こっちがやり方を指導してやらせた方が早いだろ。」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに,ほんの一時,ごく短期的に部下を動かしたいなら,そのようなやり方でも目的が達せられることはあるでしょう。

しかし,中長期的視点で考えた場合はどうでしょうか。

いつまでたっても部下が成長しなければ,上司であるあなたは,何度も何度も,部下に対して同じような指導を繰り返す羽目になります。

また,部下は部下で,自ら望んだ自発的行動ではなく,命令的に指示された行動を何度もとらされれば,だんだんとストレスが高まり,モチベーションや生産性は低下する一方でしょう。

何のために指導するのか,部下にどのようになってもらうことが,上司であるあなたの目的・目標の達成にとって効果的といえるのかをよくよく考えてみてください。


ちなみに,本来「指導」という言葉は,進むべき方向性を“指”し示して〝導”くという言葉であって,「教える」ということとは意味が異なります。

指導はまさにリーダーシップです。部下が持っている価値や可能性を明確にして(指し示して),それを自覚することができるように導くことがリーダーシップです。

適切な「指導」により,効果的に部下の成長を後押ししていきましょう!

明日も同じテーマで,今度は部下が上司の行動改善を促したい場合を例にとってお話しします。

お楽しみに(^^)!