阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2022 01.14

取引・交渉事の成否を分けるもの 3選



今回は、取引・交渉事など、

「(お互いの希望をすり合わせながら)相手との間で一定の合意を
形成するやり取り」

に関して、その成否に影響する要素を3つ取り上げ、それぞれについて

△失敗しやすい行動習慣(考え方・視点)



〇成功しやすい行動習慣(考え方・視点)

をご紹介したいと思います。

【要素① 「合意条件に対する視点」】

△ 可能な限り自分に有利な条件を勝ち取る

〇 リスクを避けつつ「Win-Win」と「公平性」から条件を調整する

「生き馬の目を抜く競争社会の中で、可能な限り自分に有利な条件を
勝ち取ることを目指すのは重要なことではないか。なぜそれが
△(=失敗しやすい)なのか!?」

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、相手との今後の関係性を一切考える必要のない、1回きりの
交渉事であれば、可能な限り有利な条件を勝ち取ることを目指すのは
合理的であり、失敗に傾きやすいとはいえません。

ですが、世の中の多くの取引・交渉事は、「相手との今後の関係性
を一切考える必要のない」ものは少ないでしょう。

では、相手との今後の関係性を考える必要があることを前提に、
皆さんが誰かと取引・交渉ごとに臨む場合を考えてみましょう。

取引・交渉事の相手が上記の△のタイプだった場合と、〇のタイプ
だった場合で、皆さんが良好でWin-Winな関係を築きやすそうなのは
どちらのタイプでしょうか?

明らかに「〇」のタイプですよね。

相手が△のタイプだった場合、「出し抜かれるのではないか?」とか、
「裏切られるのではないか」等、どうしても相手に対する疑念や不信感
がつきまとってしまうでしょう。

これに対して、〇のタイプが相手であれば安心ですし、長期的に良い
関係を築いていけそうですよね。

ですから、皆さん自身が相手から見て〇のタイプに当てはまるように
することが、取引・交渉事の成功に結び付きやすいというわけです。


【要素② 交渉の進め方】

△ (相手の都合などおかまいなしに)自分が求める条件や希望ばかり
  主張する

〇 相手の求める条件や希望を先に確認し、その点に配慮した提案を
  する

こちらについても、皆さんが誰かと取引・交渉事に臨む場合に、相手が
△のタイプだった場合と、〇のタイプだった場合とで、どちらの方が
円滑に話し合えるか、ということを考えていただければ、ご納得いただ
けるのではないかと思います。

△のタイプが相手だと、自分のことばかり考えている印象で、Win-Win
の関係性を築きにくそうですよね。
これに対して、〇のタイプは、こちらに対する思いやりや礼節が感じ
られ、自然と好印象を受ける方が多いでしょう。

ですから、皆さんが取引・交渉事を成功させたいのであれば、〇のタイ
プを習慣化する方が効果的といえるわけですね。


【要素③ 書面の要否】

△ 相手を信頼できなければ必要、信頼できれば不要

〇 書面は「共通言語」であり、より信頼関係を高めるツール

「書面」というのは、契約書、合意書、覚書等様々な呼ばれ方があり
ますが、要は、相手との合意内容(ルール、取決め、約束事)を書類
に起こしたものです。

このような書面については、もっぱら将来の紛争リスクの観点から、

「相手が期待どおりに動いてくれないリスクを感じるのであれば必要、
あまりそのようなリスクを感じなければ不要」

というようなお考えの方が少なくありません。

確かに、将来起こりうるリスク対策としても、契約書等の書面の存在
が重要であることは間違いありません。

ですが、そのような紛争・トラブルのリスク対策という観点とは別に、
これらの書面には、

「書いてある内容が相手との共通言語となり、取引等に関する重要な
項目について相互の認識を一致させることで、相手と円滑にコミュニ
ケーションしやすくなる」

という、もう1つの重要な側面があります。

(※「7つの習慣」の著者スティーブン・R・コヴィー博士は、この
ような、相互認識を一致させるために作成する書面資料を「Win-Win
実行協定」と表現し、その重要性を提唱されています)


以上、取引・交渉事の成否を分ける3つの要素についてお伝えしま
した。

ぜひ皆さんが直面される様々な取引・交渉事の場面でご活用いただけ
れば幸いです。