2020 01.09
皆さんの中で,日々のビジネスやプライベートの中で,他者にこちらの希望どおりに動いてもらいたいのに,なかなかうまくいかないという経験をされたことがないという方はいらっしゃるでしょうか?
おそらく,いらっしゃらないと思います。
私たち弁護士の仕事は,まさに,このような,「他者に希望どおりに動いてもらえず,困っている(得たい成果を得られていない)」という方に対して,『他者を動かすための効果的な方法』をご提示し,時にその方法の実践を代理することに主眼があります。
ちなみに,法律は,他者を動かすための重要なツールとして活用しますが,相手は人間なので,法律だけで問題が解決しないことも非常に多いです。
そのため,私は,「人が行動する心理」や,「人の行動動機」といったものに注目し,そういった分野の専門書等による知識の習得と,紛争解決や紛争予防の現場における実践経験の積み重ねを日々行っています。
今回は,そんな私がたどり着いた,「人を動かす力」の法則についてお話ししたいと思います。
人を動かす力は,大きく分けて,以下の3つに集約されます。
① 強制力(恐怖もしくは権力により人を動かす力)
② 交渉力(取引により人を動かす力)
③ 影響力(相手の自発的行動を促す力)
では,順番に見ていきましょう。
① 強制力(恐怖もしくは権力により人を動かす力)
強制力は,概ね2種類の類型があります。
1つは,拳銃を突き付けて,「殺されたくなければ言うことを聞け」と脅すようなやり方で行使する力です。
相手に恐怖を与えて,強引に従わせるという力ですね。
もう1つは,国家権力が法令に基づいて強制的に行動させる場合です。
裁判所から,「Aさんに100万円を支払いなさい」という判決を言い渡されてしまったので,仕方なくこれに従うというような場面が具体例ですね。
② 交渉力(取引により人を動かす力)
「交渉力」は,相手にとって有益になることをこちらがするので,その代わりに,こちらの希望に沿った行動をしてもらう,という「等価交換」によって人を動かす力のことを指します。
ビジネスにおける契約行為の大半がこれに該当します。
相応の対価(お金)を払うので,代わりに,それに見合った商品・サービスの提供を受けるという商取引が典型例ですね。
あるいは,例えば離婚,遺産分割,交通事故,その他様々な場面で生じる紛争の解決に際しても,交渉力は非常に重要な意義を持ちます。
多くの紛争において,法律に基づく強制力の発動による解決のためには,裁判を中心とする法的手続が必要となり,多大な時間・労力・費用を要することがほとんどです。
そのため,より少ない時間・労力・費用で問題を解決しようとする場合には,法律に基づく強制力の発動に頼らず,『こちらの提案する解決方法がそちらにとってもメリットが大きい』と提示し,商取引と同様に,お互いが『自分にとって有益である』と感じることのできる合意内容に着地することを目指していく必要があるのです。
(但し,商取引は,『未来に向かってお互いにプラスを得ていく』という合意になるのに対して,紛争解決の場合には,現に直面している問題の解決という観点から,『これ以上のマイナスを避ける』というような要素も含まれてくるという違いはあります。)
③ 影響力(相手の自発的行動を促す力)
影響力は,こちらの態度,姿勢,行動を見聞きしたことや,提供した情報,メッセージ,提案等をきっかけとして,恐怖でもなく,取引のためでもなく,自ら「こうするべきだ」,「こうしたい」と相手自身で考えて,行動するという力です。
例えば,自分が憧れる著名人のファッションやライフスタイル等をまねて行動する人は世の中にたくさんいますよね。
これはまさに,その著名人に「影響」されて,誰に命令されたわけでもなく,お金をもらっているわけでもないのに,自らそうしようと思って行動している典型例です。
組織におけるリーダーシップの観点でいえば,部下が,リーダーの指示に従わないとクビにされるのが怖い(=強制力を受けている)から行動するわけでもなく,給与をもらうためだけに仕方なく(=対価を得るための取引的要素を主眼として)動いているわけでもなく,リーダーの姿勢や行動,メッセージに好感や敬意を感じ,自発的に,組織のためにプラスになることを自らやろうとする,というような場面が当てはまります。
これら3つの力は,個人や組織が持続的に成果を上げ続けていくためには,場面に応じて効果的に使い分けていく必要があります。
(※なお,当然ながら,脅し等,違法不当な強制力の発動はNGです。法令や倫理的観点からもNGなのはもちろんですが,そもそも,そのような方法は持続性が皆無であり,最終的には間違いなく損失が大きくなるため,効果的ではありません)
ただし,最も持続的にプラスの効果を生み出し続ける力は,圧倒的に「③ 影響力」です。
そもそも,①~③の力は,
・常に追い求めるべき理想は③(影響力)
・③が難しければ②(交渉力)
・②もダメならやむを得ない最終手段として①(国家権力による強制力)
というのが,効果的な使い分け方となります。
他者に希望どおりに動いてもらいたい場面が生じたときには,相手や状況に応じて,以上の3つの力の効果的な発動を考えてみてくださいね。
おそらく,いらっしゃらないと思います。
私たち弁護士の仕事は,まさに,このような,「他者に希望どおりに動いてもらえず,困っている(得たい成果を得られていない)」という方に対して,『他者を動かすための効果的な方法』をご提示し,時にその方法の実践を代理することに主眼があります。
ちなみに,法律は,他者を動かすための重要なツールとして活用しますが,相手は人間なので,法律だけで問題が解決しないことも非常に多いです。
そのため,私は,「人が行動する心理」や,「人の行動動機」といったものに注目し,そういった分野の専門書等による知識の習得と,紛争解決や紛争予防の現場における実践経験の積み重ねを日々行っています。
今回は,そんな私がたどり着いた,「人を動かす力」の法則についてお話ししたいと思います。
人を動かす力は,大きく分けて,以下の3つに集約されます。
① 強制力(恐怖もしくは権力により人を動かす力)
② 交渉力(取引により人を動かす力)
③ 影響力(相手の自発的行動を促す力)
では,順番に見ていきましょう。
① 強制力(恐怖もしくは権力により人を動かす力)
強制力は,概ね2種類の類型があります。
1つは,拳銃を突き付けて,「殺されたくなければ言うことを聞け」と脅すようなやり方で行使する力です。
相手に恐怖を与えて,強引に従わせるという力ですね。
もう1つは,国家権力が法令に基づいて強制的に行動させる場合です。
裁判所から,「Aさんに100万円を支払いなさい」という判決を言い渡されてしまったので,仕方なくこれに従うというような場面が具体例ですね。
② 交渉力(取引により人を動かす力)
「交渉力」は,相手にとって有益になることをこちらがするので,その代わりに,こちらの希望に沿った行動をしてもらう,という「等価交換」によって人を動かす力のことを指します。
ビジネスにおける契約行為の大半がこれに該当します。
相応の対価(お金)を払うので,代わりに,それに見合った商品・サービスの提供を受けるという商取引が典型例ですね。
あるいは,例えば離婚,遺産分割,交通事故,その他様々な場面で生じる紛争の解決に際しても,交渉力は非常に重要な意義を持ちます。
多くの紛争において,法律に基づく強制力の発動による解決のためには,裁判を中心とする法的手続が必要となり,多大な時間・労力・費用を要することがほとんどです。
そのため,より少ない時間・労力・費用で問題を解決しようとする場合には,法律に基づく強制力の発動に頼らず,『こちらの提案する解決方法がそちらにとってもメリットが大きい』と提示し,商取引と同様に,お互いが『自分にとって有益である』と感じることのできる合意内容に着地することを目指していく必要があるのです。
(但し,商取引は,『未来に向かってお互いにプラスを得ていく』という合意になるのに対して,紛争解決の場合には,現に直面している問題の解決という観点から,『これ以上のマイナスを避ける』というような要素も含まれてくるという違いはあります。)
③ 影響力(相手の自発的行動を促す力)
影響力は,こちらの態度,姿勢,行動を見聞きしたことや,提供した情報,メッセージ,提案等をきっかけとして,恐怖でもなく,取引のためでもなく,自ら「こうするべきだ」,「こうしたい」と相手自身で考えて,行動するという力です。
例えば,自分が憧れる著名人のファッションやライフスタイル等をまねて行動する人は世の中にたくさんいますよね。
これはまさに,その著名人に「影響」されて,誰に命令されたわけでもなく,お金をもらっているわけでもないのに,自らそうしようと思って行動している典型例です。
組織におけるリーダーシップの観点でいえば,部下が,リーダーの指示に従わないとクビにされるのが怖い(=強制力を受けている)から行動するわけでもなく,給与をもらうためだけに仕方なく(=対価を得るための取引的要素を主眼として)動いているわけでもなく,リーダーの姿勢や行動,メッセージに好感や敬意を感じ,自発的に,組織のためにプラスになることを自らやろうとする,というような場面が当てはまります。
これら3つの力は,個人や組織が持続的に成果を上げ続けていくためには,場面に応じて効果的に使い分けていく必要があります。
(※なお,当然ながら,脅し等,違法不当な強制力の発動はNGです。法令や倫理的観点からもNGなのはもちろんですが,そもそも,そのような方法は持続性が皆無であり,最終的には間違いなく損失が大きくなるため,効果的ではありません)
ただし,最も持続的にプラスの効果を生み出し続ける力は,圧倒的に「③ 影響力」です。
そもそも,①~③の力は,
・常に追い求めるべき理想は③(影響力)
・③が難しければ②(交渉力)
・②もダメならやむを得ない最終手段として①(国家権力による強制力)
というのが,効果的な使い分け方となります。
他者に希望どおりに動いてもらいたい場面が生じたときには,相手や状況に応じて,以上の3つの力の効果的な発動を考えてみてくださいね。