阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2019 07.12

前回の投稿では,部下の「主体性」を引き出し,あるいは高めていくためにはどのようなことが必要かという視点で,以下の3つのポイントをご紹介しました。

ポイント① 目標の達成に必要な行動選択を部下自身の頭で考えてもらうこと

ポイント② 部下自身がコントロールできることに集中してもらうこと

ポイント③ 上司の側が主体的であること(=目標の不達成や問題の未解決について部下のせいにしないこと)

前回,ポイント①についてお話ししましたので,今回はポイント②についてお話しします。

人間は,往々にして,「自分では直接変えたり,コントロールしたりできないことに気をもむ」ことがあります。

例えば,ビジネスにおいて,中小企業経営者の方や,管理職層の方は,しばしば以下のように嘆いたり,悲観したりすることがあるのではないでしょうか。

・業界全体の市場規模が縮小していることを悲観する

・「部下の能力が低い・・・」と嘆く

・「うちには良い人材が来ない・・・」と嘆く

・「働き方改革とか勘弁してくれよ・・・」と政府に恨み節を言う

さて,これらの嘆きの基になっている事実状況は,ご自身によって直接変えたり,コントロールしたりすることができるでしょうか?

 

できませんよね。

 

もちろん,部下の能力については,効果的な教育をしたり,経験を積んでもらうことで向上することが期待できないわけではありません。

ですが,能力を向上させることについて上司が直接的にコントロールできるわけではなく,結局は部下の思考と行動次第ですよね。

このような,「自分では直接変えたり,コントロールしたりできないことに気をもむ」という非効果的な行動習慣は,当然ながら,部下が業務に取り組む上でも頻繁に発生します。

例えば,営業職の部下が,「今月何件成約がとれるか」ということに気をもんでいるということは全く珍しいことではありませんよね。

むしろ,そういう人の方が多いと思われます。

ですが,「成約が何件とれるか(=何人のお客様から「YES」をもらえるか)」という事象は,部下が自分自身で直接コントロールできることでしょうか?

これが直接コントロールできるのであれば,誰も営業不振で悩んだりしませんよね。

お客様という他者の意思決定が介在している以上,何をどうしたとしても,部下自身で直接コントロールできることではありません。

では,このような場合に,部下が直接コントロールできることとは何でしょうか?

例えば,「週に●件,見込客にお電話する」とか,「週に●回,見込客にメールマガジンを発送する」という行動指標の設定であればどうでしょうか?

これは,電話するかどうか,メールマガジンを送るかどうかは部下自身の手に委ねられている事柄ですから,直接コントロールできるといえますね。

そして,結局のところ,営業活動というのは,このような,「成約の獲得に向けて効果的な一定の行動を積み重ねること」で,結果として多くの成約獲得に至る,という法則の上に成り立っています。

ここで皆さんに考えていただきたいのは,

①「今月何件成約がとれるか」という,自分では直接コントロールできないことに脳の大部分が支配されている部下

②「今週は●件見込客に電話をかける」というように,自分で直接コントロールできることに集中している部下

のいずれが,実際に多くの成約を獲得できる可能性が高そうかということです。

さらにいえば,〝成約の獲得に至るために効果的な行動が積み重なっていく可能性が高そうか”ということです。

断言しましょう。間違いなく②のタイプです。

なぜなら,求める成果というものは,その成果を達成するために効果的な行動を積み重ねない限りは得られないという絶対的な法則があるからです。

ダイエットで考えれば,よりわかりやすいでしょう。

例えば,「2か月で5キロ体重を落とす」という成果を求めたとします。

この時,

・「痩せたいな」,「5キロちゃんと痩せられるかな」という思いは持ちつつも,そのためにどのようなことを積み重ねるかという具体的な行動指標についてあまり焦点を当てて考えない人

・「2か月後に5キロ体重を減らすために今何をすべきか」とう具体的な行動指標(※例えば「毎日食べたものを記録する」等)を設定し,その行動指標の実行に集中する人

とで,実際に2か月後に5キロ痩せている可能性が高いのはどちらかだと思いますか?

当然ながら後者ですよね。

多くの企業においては,売上げ,利益,成約件数といった数値を一定の目標として掲げています。それ自体は何らおかしなことではありません。

ですが,それらの数値目標を達成するための効果的なアプローチは,結局のところ,「目標達成のために,具体的にこれからどんな行動をとっていくべきか」というところに行きつくはずです。

このように,「目標達成のために,自分はどのような行動計画を立て,それをどのように実行していくべきか」ということを常に考える習慣がついている人というのが,まさに,「自分の直接コントロールできることに集中する習慣を身に着けている人」なわけです。

成果が上がらずにくすぶっている割には,目標の達成に対して効果的な行動が積み重なっている印象がない部下がいらっしゃる方は,ぜひ,部下が,自分の直接コントロールできる範囲の中で,成果の達成に効果的な行動は何かという視点で考えているかどうかを確認してみてください。

そして,確認の結果,そのような思考になっていないことが判明したら,「自分が直接コントロールできることに集中する」という習慣について情報提供して,具体的な行動指標を部下に考えてもらいましょう。

ぜひ,試してみてくださいね(^^)!