2017 02.07
信頼関係の薄い相手に納得してもらう方法④~「謝罪」の持つ効果性~
信頼関係の薄い相手に納得してもらう方法の第4回目となります。
シリーズ①はこちら,②はこちら,③はこちらです。
前回は,第1ステップ「傾聴」の実践方法について掘り下げました。
今回は,傾聴した後の第2ステップについてお話しします。
傾聴を実践し,十分に相手の話を聴いた後の第2ステップ,それは「謝罪」です。
なぜ傾聴の後に「謝罪」が来ると思いますか?
それは,信頼関係が薄くなっている相手への「謝罪」がどのような意味を持つかということを考えてみれば自ずと見えてきます。
そもそも,「謝罪」という行為は,「どんな時に」,「なんのために」行うのでしょうか。
まず,「どんな時に」という点については,他者に対して迷惑をかけたり,困らせたり,何らかの被害を与えてしまった時ですよね。
では,「なんのために」という点はどうでしょうか?
相手に許してもらうため?
もしそうだとすれば,そもそもどうして許してもらいたいのでしょうか?
それは,相手と信頼関係(=良い人間関係)を築きたい(回復したい)からではないでしょうか。
もちろん,『他者に迷惑をかけた時には謝るのが人ととして当然のこと』という個人的道徳心や人格の表れとして謝罪するという方もいらっしゃると思いますが,そのような方も,『相手との良好な人間関係の構築などどうでもいい』ということはないと思います。
では,実際,謝罪という行為は,相手との信頼関係の構築や回復に効果的なのでしょうか。
これは,逆の立場で,自分が他者に迷惑をかけられたり,約束を破られたりしたときのことを考えてみればすぐにわかります。
そんな時,自分の非を認めて誠実に謝罪する人と,何かしら言い訳を並べるばかりで素直に自分の非を認めず謝罪しない人,皆さんはどちらの方が信頼関係を維持できますか?
決まってますよね。
当然前者でしょう。
そういうことなのです。
相手との信頼関係が薄くなっているということは,相手のこちらに対する信頼感を低下させるような,何かしらの原因がこちら側に必ずあります。
仮に,その原因がある程度不可抗力によるものだったとしても,何かしら事前対策を打てる限りは,一切こちら側に非はないなどということはありません。
例えば,電車が遅れて待合わせに遅刻してしまったとします。
もちろん,電車が遅れるという事態は,普通に考えれば不測の事態ですから,いわゆる不可抗力といえるでしょう。
それでも私だったら,待たせてしまった相手に謝罪します。
究極的なことを言えば,『もしかしたら電車が遅れたりするようなこともあるかもしれない。』と考えて,より早く出発したり,他の交通手段を利用するということも選択できたはずだからです。
それにもかかわらず,『まあ,電車が遅れたらしょうがないよな。』等と考えて,余裕のない時間に出発したという自分の選択には,約束通りの時間に到着できずに相手を待たせてしまったという結果に対して,一定の責任があると私は考えます。
単に,結果として待たせてしまっているということのみならず,そのように,自分の選択について改善すべき点があったと考えるからこそ,真摯に謝罪します。
私の尊敬するアチーブメント株式会社の青木仁志社長は,全国様々な場所でセミナーや講演活動をされていますが,台風等で飛行機が乱れても,これまで一度も講演等をキャンセルしたことはないそうです。
なぜそんなことができているのか。
それは,そのような事態に備えて,必ず前日入りするようにしたり,(交通手段が乱れた場合の)代替移動手段を事前に想定するなどして,きちんと事前対応を徹底されているからです。
少し脱線してしまいましたが,要は,相手との信頼関係が希薄になっているということは,必ずこちら側にも一定の非があると考えられる以上,信頼回復のためには「謝罪」が必要であるということです。
とまあ,このような話をしても,まだ「謝罪」の必要性に疑問を感じられる方もいらっしゃるのではないかと思います。
あるいは,こちらが大幅に悪いわけでもないのに謝るなんてカッコ悪いとか,情けないというような感覚を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方々には,ぜひシンプルに考えていただきたいと思うのです。
些細なことでも,問題の発生について自分の非を認めて誠実に謝罪した上でこちら側に伝えたい自分の意見を話す人と,問題の発生についてこちら側にのみ責任があるかのような前提のもとに自分の意見を話す人,あなたはどちらの方が端的に好感を持てますか?
おそらく,前者のような人の方が好感が持てるという方が多いのではないでしょうか。
「謝罪」という行為は,他者との信頼関係の構築や回復に間違いなく効果があります(もちろん,相手に与えた被害の大きさによっては,謝罪だけでは到底信頼は回復し得ないという場合もありますが,それはあくまで例外です。)。
そして,相手に納得してもらうこと,すなわち,相手に自分の意見を聞き入れてもらうことを達成するためには,当然ながら,相手との間に一定の信頼関係を築く必要があります。
まずは傾聴して,相手の話を相手の身になって共感して聴きます。
そうすれば,自ずから,自分のこれまでのどのような選択が,相手との信頼関係を希薄なものにするという影響を及ぼしてしまったのかが見えてきます。
見えてきたら,そのことについて謝罪しましょう。
そもそも相手の話を今まで傾聴していなかったという選択が問題だったのかもしれません。
そんな時は,「今まできちんとあなたの話を聴けていなくてごめんなさい。」と謝りましょう。
相手の大変さ,苦しさを理解しようとしていなかったという選択が問題だったのかもしれません。
そんな時は,「今まであなたの大変さや辛さをちゃんと理解しようとしていなくてごめんなさい。」と謝りましょう。
誠実な謝罪が,相手の心の扉を開くきっかけになります。
ちなみに,「謝罪」は,信頼関係が希薄な状況でなくとも,他者との信頼関係を増強するという意味でも効果的です。
例えば,部下がミスをしてしまった時に,上司が,ミスを責めるのではなく,そのようなミスを防ぐための指導や監督,あるいはシステム作りをしていなかったという点を謝罪した上で,ミスにより生じた問題の解決方法を一緒に考えようという姿勢を見せれば,部下は間違いなく上司を尊敬し,ついていきたいと思うようになります。
そういう意味では,卓越したリーダーシップを発揮する一場面として,「謝罪」が有効に機能することがあるわけですね。
ぜひ,本稿を機に,他者との信頼関係において「謝罪」が持つ効果を考えてみてください。
次回は,いよいよ本シリーズ最終回となる予定です。
第3ステップ「win-winを目指す」について掘り下げていきます。
お楽しみに!!
シリーズ①はこちら,②はこちら,③はこちらです。
前回は,第1ステップ「傾聴」の実践方法について掘り下げました。
今回は,傾聴した後の第2ステップについてお話しします。
傾聴を実践し,十分に相手の話を聴いた後の第2ステップ,それは「謝罪」です。
なぜ傾聴の後に「謝罪」が来ると思いますか?
それは,信頼関係が薄くなっている相手への「謝罪」がどのような意味を持つかということを考えてみれば自ずと見えてきます。
そもそも,「謝罪」という行為は,「どんな時に」,「なんのために」行うのでしょうか。
まず,「どんな時に」という点については,他者に対して迷惑をかけたり,困らせたり,何らかの被害を与えてしまった時ですよね。
では,「なんのために」という点はどうでしょうか?
相手に許してもらうため?
もしそうだとすれば,そもそもどうして許してもらいたいのでしょうか?
それは,相手と信頼関係(=良い人間関係)を築きたい(回復したい)からではないでしょうか。
もちろん,『他者に迷惑をかけた時には謝るのが人ととして当然のこと』という個人的道徳心や人格の表れとして謝罪するという方もいらっしゃると思いますが,そのような方も,『相手との良好な人間関係の構築などどうでもいい』ということはないと思います。
では,実際,謝罪という行為は,相手との信頼関係の構築や回復に効果的なのでしょうか。
これは,逆の立場で,自分が他者に迷惑をかけられたり,約束を破られたりしたときのことを考えてみればすぐにわかります。
そんな時,自分の非を認めて誠実に謝罪する人と,何かしら言い訳を並べるばかりで素直に自分の非を認めず謝罪しない人,皆さんはどちらの方が信頼関係を維持できますか?
決まってますよね。
当然前者でしょう。
そういうことなのです。
相手との信頼関係が薄くなっているということは,相手のこちらに対する信頼感を低下させるような,何かしらの原因がこちら側に必ずあります。
仮に,その原因がある程度不可抗力によるものだったとしても,何かしら事前対策を打てる限りは,一切こちら側に非はないなどということはありません。
例えば,電車が遅れて待合わせに遅刻してしまったとします。
もちろん,電車が遅れるという事態は,普通に考えれば不測の事態ですから,いわゆる不可抗力といえるでしょう。
それでも私だったら,待たせてしまった相手に謝罪します。
究極的なことを言えば,『もしかしたら電車が遅れたりするようなこともあるかもしれない。』と考えて,より早く出発したり,他の交通手段を利用するということも選択できたはずだからです。
それにもかかわらず,『まあ,電車が遅れたらしょうがないよな。』等と考えて,余裕のない時間に出発したという自分の選択には,約束通りの時間に到着できずに相手を待たせてしまったという結果に対して,一定の責任があると私は考えます。
単に,結果として待たせてしまっているということのみならず,そのように,自分の選択について改善すべき点があったと考えるからこそ,真摯に謝罪します。
私の尊敬するアチーブメント株式会社の青木仁志社長は,全国様々な場所でセミナーや講演活動をされていますが,台風等で飛行機が乱れても,これまで一度も講演等をキャンセルしたことはないそうです。
なぜそんなことができているのか。
それは,そのような事態に備えて,必ず前日入りするようにしたり,(交通手段が乱れた場合の)代替移動手段を事前に想定するなどして,きちんと事前対応を徹底されているからです。
少し脱線してしまいましたが,要は,相手との信頼関係が希薄になっているということは,必ずこちら側にも一定の非があると考えられる以上,信頼回復のためには「謝罪」が必要であるということです。
とまあ,このような話をしても,まだ「謝罪」の必要性に疑問を感じられる方もいらっしゃるのではないかと思います。
あるいは,こちらが大幅に悪いわけでもないのに謝るなんてカッコ悪いとか,情けないというような感覚を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方々には,ぜひシンプルに考えていただきたいと思うのです。
些細なことでも,問題の発生について自分の非を認めて誠実に謝罪した上でこちら側に伝えたい自分の意見を話す人と,問題の発生についてこちら側にのみ責任があるかのような前提のもとに自分の意見を話す人,あなたはどちらの方が端的に好感を持てますか?
おそらく,前者のような人の方が好感が持てるという方が多いのではないでしょうか。
「謝罪」という行為は,他者との信頼関係の構築や回復に間違いなく効果があります(もちろん,相手に与えた被害の大きさによっては,謝罪だけでは到底信頼は回復し得ないという場合もありますが,それはあくまで例外です。)。
そして,相手に納得してもらうこと,すなわち,相手に自分の意見を聞き入れてもらうことを達成するためには,当然ながら,相手との間に一定の信頼関係を築く必要があります。
まずは傾聴して,相手の話を相手の身になって共感して聴きます。
そうすれば,自ずから,自分のこれまでのどのような選択が,相手との信頼関係を希薄なものにするという影響を及ぼしてしまったのかが見えてきます。
見えてきたら,そのことについて謝罪しましょう。
そもそも相手の話を今まで傾聴していなかったという選択が問題だったのかもしれません。
そんな時は,「今まできちんとあなたの話を聴けていなくてごめんなさい。」と謝りましょう。
相手の大変さ,苦しさを理解しようとしていなかったという選択が問題だったのかもしれません。
そんな時は,「今まであなたの大変さや辛さをちゃんと理解しようとしていなくてごめんなさい。」と謝りましょう。
誠実な謝罪が,相手の心の扉を開くきっかけになります。
ちなみに,「謝罪」は,信頼関係が希薄な状況でなくとも,他者との信頼関係を増強するという意味でも効果的です。
例えば,部下がミスをしてしまった時に,上司が,ミスを責めるのではなく,そのようなミスを防ぐための指導や監督,あるいはシステム作りをしていなかったという点を謝罪した上で,ミスにより生じた問題の解決方法を一緒に考えようという姿勢を見せれば,部下は間違いなく上司を尊敬し,ついていきたいと思うようになります。
そういう意味では,卓越したリーダーシップを発揮する一場面として,「謝罪」が有効に機能することがあるわけですね。
ぜひ,本稿を機に,他者との信頼関係において「謝罪」が持つ効果を考えてみてください。
次回は,いよいよ本シリーズ最終回となる予定です。
第3ステップ「win-winを目指す」について掘り下げていきます。
お楽しみに!!