阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 01.11

人間関係を良好にするコツ⑬~「原則」を意思決定の基軸とする~

皆さんは,「原則」という言葉を聞いたら,どんなことを思い浮かべるでしょうか。

辞書では,「人間の社会的活動の中で、多くの場合にあてはまる基本的な規則や法則」という定義づけがなされていました。

私の解釈としては,「原則」は,『●●という原因があった場合には,××という結果が発生する』という,いわゆる『原因と結果の法則』とほぼイコールだと考えています。

『原因と結果の法則』を略して「原則」と称しているのではないか,と個人的には思っているくらいです。

例えば,デール・カーネギー著「人を動かす」では,「人に好かれる六原則」という章の中で,その第1の原則として,「誠実な関心を寄せる」というものが紹介されています。

これは,他者に対して「誠実な関心を寄せる」という行動がなされること(=原因)によって,他者に好かれるという結果が発生するという法則を説明したものです。

自分が大事にしていること,興味を持っていること,好きなこと等に対して,邪な動機(※例えば騙そうとしている,出し抜こうとしているなど)や,茶化すような意図ではなく,誠実に(あるいは純粋に)関心を持ってくれる人がいたら,どうでしょうか。

誰だって嬉しいですよね。

そして,そのような関心を寄せてくれた人に対しては,自然と好印象を抱くでしょう。

このように,一定の原因によって一定の結果が発生するということについて法則性(=決まった流れ)が存在する概念こそが,「原則」であると私は考えています。

今回皆さんにお伝えしたいのは,この「原則」を自らの意思決定の基軸とすることが,人間関係を良好にする上で大きな効果を持つ,ということです。

世の中のほとんどの人は,何を基準にして意思決定をし,行動を選択していると思いますか。

それは,個人の「価値観」です。

(ちなみに,私としては,本当は「パラダイム」という言葉を用いる方がしっくりくるのですが,「パラダイム」という言葉は聞き慣れない方も多いかと思いますので,「価値観」という言葉で置き換えました。)

しかしながら,個人の価値観は,その人自身にとっては一定の重要性や優位性を持っている考え方・概念であったとしても,それが他者と共通するとは限りません。

よく夫婦やカップルが残念ながらお別れしてしまうときに,『価値観の違いによって関係性が保てなくなった』みたいな話ってありますよね。

他者との価値観の相違が,人間関係を破壊するという典型例だと思います。

ビジネスやプロフェッショナルの世界でも同様です。

個人の価値観というのは,言うなればその人の人生そのものを表すといっても過言ではないものであり,アイデンティティにも関わるものです。

そのため,価値観がぶつかりあってしまうと,すべからくどのような人間関係においても,関係性(パートナーシップ)を維持することは難しくなってしまうことが多いでしょう。

これは,どなたでも,多かれ少なかれ人生において経験していらっしゃることではないかと思います。

では,どうしたらそのような価値観の対立による人間関係の破壊を回避できるのか。

それが,『「原則」を自らの意思決定の基軸とする』ということなのです。

「原則」は,原因と結果に関する一定の法則であり,普遍的かつ不変的であるという特徴を有しています。

世界中で通用する法則であり,また,昔から変わらず,今後も変わることなく原則としてあり続けるということですね。

このような「原則」を軸として他者と関わる限り,個人の価値観の対立という状況は発生しません。

例えば,私が頻繁に用いている原則の1つとして,「議論を避ける」というものがあります。

これは,先ほど言及した「人を動かす」において,「人を説得する十二の原則」の第1原則として挙げられているものです。

以前の私は,妻と家庭において会話している際に,妻の話している内容が自分の価値観と合わないと感じたら,「その考え方はいかがなものか。」という感じで,妻の考え方を変えようと議論をけしかけてしまっていました。

当然,妻はそれに対して反発します。

妻はそもそも自分の考え方の是非について私と議論したいなんて全く思っていないわけですから,自分の考え方にケチをつけられて腹立たしいという気持ちしか湧いてきませんよね。

こうして,まさに価値観の対立という図式ができあがってしまっていたわけです。

言うまでもなく,このような議論をけしかける行為によってプラスの影響は全くなく,むしろ夫婦間の関係性を悪くするだけでした。

そんな悪しき習慣を持っていた私ですが,「議論を避ける」という原則を知ったおかげで,何とかそのような習慣を断ち切ることができました。

この原則を知って以降は,妻の言動が自分の価値観と合わないと感じたとしても,議論をけしかけることはしないようにしました。

その代わりに,妻の言動を見聞きして,『なるほど,妻はそういう考えなんだな。』というように,まずは受容するということを基本的な習慣としました。

結果どうなったか。

これも原則なので当然といえば当然なのですが,以前よりもずっと夫婦の関係は良くなりました。

勘違いしていただきたくないのですが,これは,私が自分らしさを抑え込んで「我慢をした」ということとは異なります

私は,自分自身で『「原則」を意思決定の基軸とする人間で在りたい』と強く望み,その願望と行動を一致させるために,上記のような行動変容を行ったのです。

したがって,「議論を避ける」という選択をした私は,原則を軸に行動を選択できているという満足感を得ることができ,気分が良くなりました。

その上,自分が一番望んでいた「良い夫婦関係を形成する」という目的に対しても成功体験となったので,自信にもなりました。

さらに,そのように行動変容をした結果として気づけたことですが,実際のところ,価値観に合わないと感じることの多くは単なる個人の考え方の違いによるものが大きく,『何とかして妻の考え方を変えてもらわなければ,妻自身や今後の夫婦にとってよくない』というようなことではありませんでした。

このように,「原則」を自らの意思決定の基軸とし,行動するようにしていけば,間違いなく人間関係は良好になります。

価値観を捨てろなどと言うつもりは全くありません。先ほども言ったように,価値観は個人のアイデンティティに関わるものであり,個人として大事にすべきものです。

私がお伝えしたいことは,人間関係を良好にしたいという願望があるのであれば,原則を行動選択の軸とすることが非常に効果的である,ということにつきます。

私が頻繁に引用する「人を動かす」,「7つの習慣」等の本や,「選択理論」,「アドラー心理学」等の心理学研究は,このような「原則」として揺るぎないものを私たちに提示してくれる先人たちの素晴らしき叡智の結晶体です。


「原則」を意思決定の基軸とする


ぜひ,皆さんも意識してみてくださいね!