阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 09.08

人間関係を良好にするコツ⑯~真の意味で相手を理解する~

家族にしろ,職場にしろ,その他のコミュニティにしろ,人間関係にで悩みを抱えている方の多くは,

「●●(=悩みの元になっている相手)のことが理解できない・・・」

という言葉がよく出てきます。

(以下,便宜上,「●●」ではなく「A」としますね。)


ここで,「Aのことが理解できない」と言っているときの「Aのこと」というのは,もっと具体的にいうとどんなことが当てはまるでしょうか?

家族として,あるいは職場やコミュニティの仲間として一定の関わりを持っている相手であれば,外見はもちろんのこと,年齢や職業等の単純な情報がわからないということはほとんどないですよね。

そうであるならば,ここでいう「Aのこと」というのは,突き詰めれば,Aの考え方や価値観,大事にしていること,人生における優先順位等が当てはまることになるでしょう。

こういった情報は,Aさんの人格に深く関わるものであり,Aさん自身からよくよくお話を聴いたり,Aさんの日常的な行動をつぶさに観察したりしなければ見えてこない情報です。

そういう意味では,よほど密なコミュニケーションができていない限り,「Aのことが理解できない」という状況は当たり前といえば当たり前なわけです。

その点を踏まえると,そもそも「Aのことが理解できない」という表現は,実は適切ではありません。

なぜなら,『理解できない』と感じている場合は,ほぼ100%,理解できるほど相手の話をよく聴いたり,相手の行動をよくよく観察してはいない状況だからです。

つまり,『理解できない』のではなく,『理解しようとしていない』というのが,より適切な表現ということができます。


ただ,『理解しようとしていない』という表現を使ってしまうと,自分が人間関係で苦労しているのは自分の努力が足りていないからであるということを認めることになってしまうので,正直きついわけです。

人間誰しも自分が可愛いですし,人生において発生している問題の原因が自分にあると考えるのはなかなか辛いものがありますからね。

とはいえ,直面している人間関係の問題を解決して,周りの人たちと良好な関係を築き,より楽しい人生を歩んでいきたいのであれば,そこは頑張りどころなわけです。

自分が今までAさんを『理解できない』と思っていたのは,実は,Aさんを『理解しようとしていない』だけであったことを素直に認め,Aさんを理解するために効果的な行動をしていくという方向に自らの舵を切っていくことができるかどうかで,人間関係は劇的に変わります。


さて,それでは,相手を理解するためにすべきことは何でしょうか。

これはいたってシンプルです。

「傾聴」「受容」,この2つに尽きるというのが私の持論です。


「傾聴」は,相手自身に成り代わったつもりで,相手と同じ気持ちになって(=共感して)話を聴くことです。

ただ単に相手の話を注意深く聞いたり,さえぎったり反論したりせずに,相槌をうちながらうんうんと話を聞くだけでは,傾聴とは言えません。

(もちろん,そのように注意深く相手の話を聞く姿勢は何ら悪いことではありません。あくまで「傾聴」とは何かという話です。傾聴については,こちらの過去記事で掘り下げておりますので,適宜ご参照ください。)


次に「受容」です。

「受容」も,人よって解釈の仕方や,言葉としての使われ方が様々な言葉です。

辞書では,「受け入れて,取り込むこと」という定義が記載されていました。

また,カウンセリング技法の中では,「受容」とは,「相手の言葉・感情などを、自分の価値観で批判したり評価をせず、そのまま、ありのままに受け入れること」というような意味で用いられています。

私は,「受容」とは,自分と異なる他者の考え方や習慣,文化等について「(存在)価値を認めること」という表現で整理するのがしっくりきています。

実際に出てくる言葉のイメージとしては,他者から自分と異なる考えが示された時に,『ああ,なるほど。あなたは私と違ってそういう考え方をしているんだね。』という反応をするような感じです。

相手の考え方の価値を認めているので,自分とは異なる考えであっても,原則として否定したり批判したりはしません(※例外は,各自の意見の長所と短所を整理するような議論の場などです。)


「傾聴」と「受容」は,言葉自体が人によって様々な解釈がされている上に,一定の忍耐力や自制心が要求される姿勢であるため,これらを習慣にすることは容易なことではありません。

ですが,皆さん安心してください。

ある行動を意識して実践する習慣を身に着けていただければ,自然と「傾聴」と「受容」が自分の習慣になっていくという,そんな素晴らしい行動習慣があるのです!

それは,「相手の話の内容及び相手の気持ちについて,自分の言葉で置き換えて,相手が納得できるレベルで説明する」という行動習慣です。

例えば,相手が「今の会社でこのまま働き続けていいのかわからない・・・」というような悩みを話してくれたとします。

このような話を聞いたときに,伺える相手の気持ちはどういうものでしょうか?

まずは,不安や焦燥が考えられますよね。

そこで,このような相手の話を聴いたときに,

「今の職場で働き続けることが自分の人生にとって良い選択なのかどうかわからなくて,不安なんだね」

というように,相手のお話の趣旨と,そこから伺える気持ちを言葉にして相手に語りかけるのです。

皆さんが相手の立場(=話を聴いてもらっている立場)であったとしたら,このように,自分の話の筋をしっかりと押さえた上で,自分自身も言葉にしていない感情や気持ちを表現してくれる相手をどう思うでしょうか。

ほぼ間違いなく,『この人はきちんと誠実に自分の話を聴いてくれている』という信頼感を持ちますよね(=傾聴)。

また,自分の考えを否定したり批判したりせずありのままに認めてくれているという安心感も湧いてくるのではないでしょうか(=受容)。

ね,一石二鳥でしょ(^^)?


本投稿で一番皆さんにお伝えしたいことなので,おさらいしますね。

相手を理解するために大事な習慣は,「傾聴」「受容」です。

そして,「傾聴」と「受容」を実際に相手に対して実践できる具体的な行動習慣は,「相手の話の趣旨と,そこからうかがえる相手の気持ちを自分の言葉に置き換えて相手に伝える(確認する)こと」です。

この確認作業をやった時に,相手が,「そうなんだよ~!」とか,あるいは,こちらと話しているうちに,「自分の考えが整理できてきた!」というようなリアクションをしてくれたら,それは,あなたが相手のことを一定程度「理解した」瞬間ということもできるでしょう。

つまり,上記の行動習慣は,相手のことを自分がどれだけ理解できているのかを測る指標としても活用できるわけです。


相手の気持ちを推測する部分は,時には難しく感じる場合もあるでしょう。

でも,ずれていてもいいのです。

「今の話を聴いて,僕はあなたが~~の点で不安や恐怖を感じているのかなと思ったんだけど,違うかな?」というような問いかけをして,「いや,自分は不安や恐怖を感じているわけではない」と相手が言ってきても,『え,ヤバい!ミスった!?』などと思う必要は全くありません。

そんな時は,「そうか,勘違いだったみたいでごめんね。そうすると,あなたは~~の点についてどんな気持ちになったの?」と,さらに相手に話を促せばいいのです。

そこから新たに出てくる相手の話の内容によって,さらに相手の気持ちの推察を深めることができます。


これは本当に本当に効果性が高い行動習慣ですので,ぜひぜひ試してみてくださいね!