2017 06.08
皆さんは,「インサイド・アウト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
私の敬愛するスティーブン・R・コヴィー博士は,著書「7つの習慣」の中で以下のように述べています。
『「インサイド・アウト」とは,一言で言えば,自分自身の内面から始めるという意味である。内面のもっとも奥深くにあるパラダイム,人格,動機を見つめることから始めるのである。』
「自分自身の内面から始める」と言われても,なかなかピンとこない方も多いかもしれませんね。
私は,インサイド・アウトの概念を問題解決と結び付けて考えるとわかりやすいのではないかと思っています。
問題解決の場面におけるインサイド・アウトとは,問題の解決のために自分自身はどのような考え方を基軸として,どのような行動を採るのかというように,専ら自分の「考え方」と,それに基づく「(自分自身の)具体的行動」に集中することである,と私は解釈しています。
その逆に,アウトサイド・インは,問題の原因を自分の外に置き,その外部要因をどうにかすることで問題を解決しようという考え方になります。
例えば,“子供に対して頭ごなしに怒る”という配偶者の行動が問題であると感じ,これを解決したい(配偶者に行動を改善してもらいたい)とします。
この時,配偶者に気を使いながら,穏やかに,「そんなに頭ごなしに怒るのは子供の教育に良くないんじゃないかな」等と配偶者を諭す行為は,インサイド・アウトでしょうか?それともアウトサイド・インでしょうか?
私は,これはアウトサイド・インだと考えます。
どんなに気を使って穏やかな物言いをしたとしても,結局のところ,「あなたは良くないことをしているから,その問題行動をやめなさい。」というメッセージを相手にぶつけていることに変わりはありません。
つまり,問題の原因を自分ではなく配偶者という外部要因において,配偶者(外部要因)を変えることで問題を解決しようとしているわけですね。
では,このような場面でインサイド・アウトのアプローチを採ったとしたら,どのような考え方と行動になるでしょうか。
インサイド・アウトの場合,まず,“子供に対して頭ごなしに怒る”という配偶者の行動を変えてもらいたいという自分の考え方(願望)は,自分の望む家族関係において,原則に照らして効果的な考え方と言えるかどうかを考えるところから始めます。
まさに,自分自身の奥深くのパラダイム(ものの見方,考え方)を見つめ直すところから始めるわけですね。
この段階で重要なことは,「自分が本当に求めているのは何か(どんな状態か)」ということをまず明確にすることです。
上記の例でいえば,どんな家族関係を求めているのかを明確にするということですね。
例えば私だったら,『お互いが感情的になって相手を不快にさせたり恐怖を感じさせるような言動をとるようなことはせず,常に笑顔で楽しく一緒の時間を過ごせる家族関係』を求めています。例として,この後のお話についても,この理想像をベースに考えていきたいと思います。
このように,自分の求める理想的な状態を思い描いたら,次に考えるのは,「自分が問題と感じた現象(事実)は,求める理想像との関係で本当に問題といえるかどうか」ということです。
上記の例でいえば,“子供を頭ごなしに怒る”という配偶者の行動は,自分が求めている理想の家族像との関係で本当に問題といえるのかどうかを考えます。
「怒る」という行為は,場合によっては子供の教育上必要な時もあるかもしれません。
ですが,「頭ごなしに怒る」というのは,『相手の言い分を聞かず,決めつけた態度で怒る』ということを意味します。
きちんと子供の話を聞かずに一方的に決めつけた態度で怒るという行為をしてしまうと,間違いなく子供は親に対する信頼感を減退させますし,精神的にも辛い気持ちになってしまいます。
したがって,“子供を頭ごなしに怒る”という配偶者の行動は,少なくとも,上記の,私が求める理想の家族像との関係では,真に解決すべき問題と考えてよいでしょう。
さて,ここまできたら,残るは具体的に問題解決のためにどんな行動を採るか,という最終判断となります。
上記の例でいえば,『“子供を頭ごなしに怒る”という行為を配偶者にやめてもらうために自分がすべき行動は何か』ということを考えることになります。
ここで最も重要なことは,自分がどのような行動を採ることが,求める理想の家族像へと近づくために効果的か,という視点で考えることです。
言い換えれば,「効果性の原則」に則って行動を選ぶということです。
「効果性の原則」とは,『一定の原因行動が,自分の求める結果を得るために効果的である』という公式が成り立つ法則(決まり事)のことをいいます。
例えば,『正直であること(=原因行動)は,相手からの信頼を得る(=求める結果)ために効果的である』というのは誰も異論のないところでしょうから,法則といえますよね。
あるいは,『相手の話を親身になって聴くこと(=原因行動)は,相手からの信頼を得る(=求める結果)ために効果的である』というのも,法則といえるでしょう。
このような,社会において普遍的に通用する「効果性の原則」に照らして,どのような行動が,求める結果との関係で効果的かを考えるわけです。
(※ちなみに,個人や人間関係における「効果性の原則」の具体例は,本ブログの過去記事で色々とご紹介しておりますので,ご興味があれば過去記事も色々眺めてみていただければ幸いです。)
上記の例でいえば,“子供を頭ごなしに怒る”という行動をやめてもらうために,自分自身がどのような行動をとることが(原則に照らして)効果的かどうかを考えるわけですね。
さて,それでは,相手に直接的に「やめて」と告げる行為は効果的でしょうか。
効果的な場合もないとはいえませんが,悪い意味で習慣化しているような行動の場合,ただ「やめて」と告げても,なかなかやめられない(やめようとしない)ことの方が圧倒的に多いでしょう。
それどころか,配偶者は,『自分は子供の教育上の必要から怒っているのであって,おかしなことはしていない』と考えている可能性が高いですから,それを「やめて」と言ってやめさせようとしても,『なぜ正しいことやめなければならないのか!?』と反発心を招いてしまう恐れも少なくありません。
したがって,このような方法は効果的ではないことの方が多いと考えられます。
では,どんな行動が効果的といえそうでしょうか。
例えば,自分自身がどんな時でも頭ごなしに怒らず,きちんと子供の言い分を聞いた上で,親として注意すべきことは注意する,という姿勢を常に見せることは,一定の効果性があるでしょう。
現にそのような姿勢を見せられれば,意識せずにはいられません。
(「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがありますが,まさに,人は近しい他者の行動を見て自分の問題行動に気づくということが往々にしてあります。)
あるいは,そもそも日常的に配偶者がイライラを募らせることが多く,そのイライラをつい子供に対してぶつけてしまっているというような原因があるかもしれません。
そうであれば,配偶者が日常的にイライラしなくてすむように,イライラの原因となっていることを減らすサポートをするのも一定の効果性があるでしょう。
例えば,配偶者が専業主婦の方であれば,定期的に,子育てをお休みして1人の自由を満喫できる時間を作れるように協力するとか,本当は手を付けたいけどなかなか手を付けられない家事を積極的に担当するというような方法が考えられるでしょう。
逆に,配偶者がバリバリのビジネスマンであれば,仕事での愚痴を親身に聴いてあげるとか,(仕事上抱えている問題を解決するための手法やアイデアについて)自分自身も色々と学んで,それを配偶者と共有する等といったアプローチが考えられるかもしれません。
人のタイプによって効果性は様々ですので,どのようなアプローチが高い効果性を持つかはケースバイケースではあります。
とはいえ,少なくとも,相手の問題行動の改善という結果を求めるのであれば,安易に言って聞かせるという方法ではなく,自分ができることの中で,相手自身が自分の行動の問題性に気づいて改善しようと決意するような効果を持ちうることに集中する,という視点が肝要です。
世の中の大半の人々は,アウトサイド・インの考え方が染みついてしまっているがゆえに,変えられないものにばかり気をとられて苦悩しながら日々を生きています。
ですが,自分自身の考え方をインサイド・アウトに切り替えるだけで,極端にいえばそのような苦悩からは一瞬にして解放されることもあり得るのです。
最後に,問題解決の場面におけるインサイド・アウトの考え方の流れについて簡単におさらいしておきますね。
① 発生している問題との関係で,自分自身が真に求めている理想的な状態や成果は何かを考える
(例:家族関係における問題との関係で,自分が真に求めている理想的な家族関係とは何かを考える)
② ①で考えた理想像に照らして,自分が「問題」と感じた現象は本当に「解決の必要な問題」といえるのかどうかを考える
(例:「常に笑顔で楽しく一緒の時間を過ごすことができる家族関係」という理想像に照らして,“子供を頭ごなしに怒る”という配偶者の行動は,「解決の必要な問題」といえるのかどうかを考える)
③ その問題を解決するために,「効果性の原則」に照らして,自分自身がどのような行動をすることが効果的か(=自分自身の行動をどのように変化させることが効果的か)を考える
(例:単に相手に「そのような行動は問題だから,やめた方がいいと思うよ。」と告げることが,問題を解決する手段として効果的かどうかを考える)
④ ③で考えたアイデアを実行し,効果を検証する。一定期間実践してみても効果がいまいちであれば,別なアプローチを考える。
インサイド・アウトの習慣が身に着いてくると,他者の言動という外部要因が気にならなくなってくるので,人間関係における悩みが激減します。
今までアウトサイド・インの考え方が当たり前だった方であれば,おおげさではなく世界が一変しますので,ぜひ試してみてくださいね!
私の敬愛するスティーブン・R・コヴィー博士は,著書「7つの習慣」の中で以下のように述べています。
『「インサイド・アウト」とは,一言で言えば,自分自身の内面から始めるという意味である。内面のもっとも奥深くにあるパラダイム,人格,動機を見つめることから始めるのである。』
「自分自身の内面から始める」と言われても,なかなかピンとこない方も多いかもしれませんね。
私は,インサイド・アウトの概念を問題解決と結び付けて考えるとわかりやすいのではないかと思っています。
問題解決の場面におけるインサイド・アウトとは,問題の解決のために自分自身はどのような考え方を基軸として,どのような行動を採るのかというように,専ら自分の「考え方」と,それに基づく「(自分自身の)具体的行動」に集中することである,と私は解釈しています。
その逆に,アウトサイド・インは,問題の原因を自分の外に置き,その外部要因をどうにかすることで問題を解決しようという考え方になります。
例えば,“子供に対して頭ごなしに怒る”という配偶者の行動が問題であると感じ,これを解決したい(配偶者に行動を改善してもらいたい)とします。
この時,配偶者に気を使いながら,穏やかに,「そんなに頭ごなしに怒るのは子供の教育に良くないんじゃないかな」等と配偶者を諭す行為は,インサイド・アウトでしょうか?それともアウトサイド・インでしょうか?
私は,これはアウトサイド・インだと考えます。
どんなに気を使って穏やかな物言いをしたとしても,結局のところ,「あなたは良くないことをしているから,その問題行動をやめなさい。」というメッセージを相手にぶつけていることに変わりはありません。
つまり,問題の原因を自分ではなく配偶者という外部要因において,配偶者(外部要因)を変えることで問題を解決しようとしているわけですね。
では,このような場面でインサイド・アウトのアプローチを採ったとしたら,どのような考え方と行動になるでしょうか。
インサイド・アウトの場合,まず,“子供に対して頭ごなしに怒る”という配偶者の行動を変えてもらいたいという自分の考え方(願望)は,自分の望む家族関係において,原則に照らして効果的な考え方と言えるかどうかを考えるところから始めます。
まさに,自分自身の奥深くのパラダイム(ものの見方,考え方)を見つめ直すところから始めるわけですね。
この段階で重要なことは,「自分が本当に求めているのは何か(どんな状態か)」ということをまず明確にすることです。
上記の例でいえば,どんな家族関係を求めているのかを明確にするということですね。
例えば私だったら,『お互いが感情的になって相手を不快にさせたり恐怖を感じさせるような言動をとるようなことはせず,常に笑顔で楽しく一緒の時間を過ごせる家族関係』を求めています。例として,この後のお話についても,この理想像をベースに考えていきたいと思います。
このように,自分の求める理想的な状態を思い描いたら,次に考えるのは,「自分が問題と感じた現象(事実)は,求める理想像との関係で本当に問題といえるかどうか」ということです。
上記の例でいえば,“子供を頭ごなしに怒る”という配偶者の行動は,自分が求めている理想の家族像との関係で本当に問題といえるのかどうかを考えます。
「怒る」という行為は,場合によっては子供の教育上必要な時もあるかもしれません。
ですが,「頭ごなしに怒る」というのは,『相手の言い分を聞かず,決めつけた態度で怒る』ということを意味します。
きちんと子供の話を聞かずに一方的に決めつけた態度で怒るという行為をしてしまうと,間違いなく子供は親に対する信頼感を減退させますし,精神的にも辛い気持ちになってしまいます。
したがって,“子供を頭ごなしに怒る”という配偶者の行動は,少なくとも,上記の,私が求める理想の家族像との関係では,真に解決すべき問題と考えてよいでしょう。
さて,ここまできたら,残るは具体的に問題解決のためにどんな行動を採るか,という最終判断となります。
上記の例でいえば,『“子供を頭ごなしに怒る”という行為を配偶者にやめてもらうために自分がすべき行動は何か』ということを考えることになります。
ここで最も重要なことは,自分がどのような行動を採ることが,求める理想の家族像へと近づくために効果的か,という視点で考えることです。
言い換えれば,「効果性の原則」に則って行動を選ぶということです。
「効果性の原則」とは,『一定の原因行動が,自分の求める結果を得るために効果的である』という公式が成り立つ法則(決まり事)のことをいいます。
例えば,『正直であること(=原因行動)は,相手からの信頼を得る(=求める結果)ために効果的である』というのは誰も異論のないところでしょうから,法則といえますよね。
あるいは,『相手の話を親身になって聴くこと(=原因行動)は,相手からの信頼を得る(=求める結果)ために効果的である』というのも,法則といえるでしょう。
このような,社会において普遍的に通用する「効果性の原則」に照らして,どのような行動が,求める結果との関係で効果的かを考えるわけです。
(※ちなみに,個人や人間関係における「効果性の原則」の具体例は,本ブログの過去記事で色々とご紹介しておりますので,ご興味があれば過去記事も色々眺めてみていただければ幸いです。)
上記の例でいえば,“子供を頭ごなしに怒る”という行動をやめてもらうために,自分自身がどのような行動をとることが(原則に照らして)効果的かどうかを考えるわけですね。
さて,それでは,相手に直接的に「やめて」と告げる行為は効果的でしょうか。
効果的な場合もないとはいえませんが,悪い意味で習慣化しているような行動の場合,ただ「やめて」と告げても,なかなかやめられない(やめようとしない)ことの方が圧倒的に多いでしょう。
それどころか,配偶者は,『自分は子供の教育上の必要から怒っているのであって,おかしなことはしていない』と考えている可能性が高いですから,それを「やめて」と言ってやめさせようとしても,『なぜ正しいことやめなければならないのか!?』と反発心を招いてしまう恐れも少なくありません。
したがって,このような方法は効果的ではないことの方が多いと考えられます。
では,どんな行動が効果的といえそうでしょうか。
例えば,自分自身がどんな時でも頭ごなしに怒らず,きちんと子供の言い分を聞いた上で,親として注意すべきことは注意する,という姿勢を常に見せることは,一定の効果性があるでしょう。
現にそのような姿勢を見せられれば,意識せずにはいられません。
(「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがありますが,まさに,人は近しい他者の行動を見て自分の問題行動に気づくということが往々にしてあります。)
あるいは,そもそも日常的に配偶者がイライラを募らせることが多く,そのイライラをつい子供に対してぶつけてしまっているというような原因があるかもしれません。
そうであれば,配偶者が日常的にイライラしなくてすむように,イライラの原因となっていることを減らすサポートをするのも一定の効果性があるでしょう。
例えば,配偶者が専業主婦の方であれば,定期的に,子育てをお休みして1人の自由を満喫できる時間を作れるように協力するとか,本当は手を付けたいけどなかなか手を付けられない家事を積極的に担当するというような方法が考えられるでしょう。
逆に,配偶者がバリバリのビジネスマンであれば,仕事での愚痴を親身に聴いてあげるとか,(仕事上抱えている問題を解決するための手法やアイデアについて)自分自身も色々と学んで,それを配偶者と共有する等といったアプローチが考えられるかもしれません。
人のタイプによって効果性は様々ですので,どのようなアプローチが高い効果性を持つかはケースバイケースではあります。
とはいえ,少なくとも,相手の問題行動の改善という結果を求めるのであれば,安易に言って聞かせるという方法ではなく,自分ができることの中で,相手自身が自分の行動の問題性に気づいて改善しようと決意するような効果を持ちうることに集中する,という視点が肝要です。
世の中の大半の人々は,アウトサイド・インの考え方が染みついてしまっているがゆえに,変えられないものにばかり気をとられて苦悩しながら日々を生きています。
ですが,自分自身の考え方をインサイド・アウトに切り替えるだけで,極端にいえばそのような苦悩からは一瞬にして解放されることもあり得るのです。
最後に,問題解決の場面におけるインサイド・アウトの考え方の流れについて簡単におさらいしておきますね。
① 発生している問題との関係で,自分自身が真に求めている理想的な状態や成果は何かを考える
(例:家族関係における問題との関係で,自分が真に求めている理想的な家族関係とは何かを考える)
② ①で考えた理想像に照らして,自分が「問題」と感じた現象は本当に「解決の必要な問題」といえるのかどうかを考える
(例:「常に笑顔で楽しく一緒の時間を過ごすことができる家族関係」という理想像に照らして,“子供を頭ごなしに怒る”という配偶者の行動は,「解決の必要な問題」といえるのかどうかを考える)
③ その問題を解決するために,「効果性の原則」に照らして,自分自身がどのような行動をすることが効果的か(=自分自身の行動をどのように変化させることが効果的か)を考える
(例:単に相手に「そのような行動は問題だから,やめた方がいいと思うよ。」と告げることが,問題を解決する手段として効果的かどうかを考える)
④ ③で考えたアイデアを実行し,効果を検証する。一定期間実践してみても効果がいまいちであれば,別なアプローチを考える。
インサイド・アウトの習慣が身に着いてくると,他者の言動という外部要因が気にならなくなってくるので,人間関係における悩みが激減します。
今までアウトサイド・インの考え方が当たり前だった方であれば,おおげさではなく世界が一変しますので,ぜひ試してみてくださいね!