阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 04.25

皆さんは,対人コミュニケーションにおいて,自分の持っている「情報」をどのくらい意識していますか?

ビジネスにせよプライベートにせよ,人間関係において摩擦を生む重要な要因の1つとして,「情報不足であること」が挙げられます。

より厳密にいえば,「情報不足であるにもかかわらず思い込みで行動する」というところが,摩擦の原因となります。


さて,ここで皆さんに質問です。

皆さんの人間関係や組織内において何らかの人的問題が発生しているときに,その背景事情は何か,登場人物の価値観(パラダイム)はどのようなものか,実際に発生した事実は何か,登場人物の主観的な言い分は何か,などと言った情報の収集・整理を常に十分行った上で,問題に対処しているという方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?

『それなりにはやっているつもりだけど,「十分に」と言われると自信がない・・・』

そんな風に思われた方は少なくないのではないかと思います。

確かに,日々様々なタスクに追われている状況では,何か問題が発生した時に,しっかりと情報を収集・整理して解決にあたるというのはかなり大変なことかもしれません。

実際,些細な問題であれば,そこまで時間やエネルギーを費やす必要性はないということもあるでしょう。

しかし,例えば家族関係であるとか,会社における部下のパフォーマンス低下であるとか,顧客の獲得・維持であるとか,そういった,皆さんの人生において重要な人的問題について,不十分な情報を基に行動選択をしていくことはどうでしょうか?

効果的だと思いますか?

私は決してそうは思いません。

なぜなら,「情報」は,求める成果に対する(効果的な原則に基づく)行動選択を行う上で極めて重要な判断材料であり,「情報不足」という状況は,下手をすれば完全な逆効果の選択をしてしまうことを誘発するからです。

例えば,私は以前,妻がどのようなことに幸せを感じるか,(夫としての)私に対してどんなことを求めているか,という情報が不足している状態で,自分自身の価値観だけで行動を選択し,妻との関係を悪くしてしまったことがありました。

その頃は,個人や人間関係に関する原則の理解も不十分であり,情報の価値も全く理解できていなかったのです。

しかし,その後,7つの習慣や選択理論と出会えたことで,自分自身が,求めている成果(良好な夫婦関係)との関係でいかに逆効果なことをしているのかに気づくことができました。

それからは,アンテナを大きく広げて,妻をはじめ,およそ「人」に関するたくさんの情報を集めることを意識するようになりました。


また,特に周りの人との人間関係に関する情報は,どれだけ集めても満杯になるということはないので,常に何らかの情報は不足していることを前提としつつ,その不足情報について,自分の思い込みで埋めるということをしないように意識するようになりました。

まだまだ私も未熟の極みではありますが,そのような習慣を身に着けてからは,以前よりも夫婦関係は確実に良くなっていますし,その他の人間関係においても,大きなトラブルや悩みを抱えるということはほぼなくなりました。

弁護士という仕事をしていて日々感じることですが,概して,大抵の人は,十分な情報を集めないままに,自分の思い込みで行動します。

そして,多くの場合,これがトラブルの種になったり,問題を悪化させるたりする原因になっています。


例えば,どうにも特定の従業員のパフォーマンスが上がらず困る,ということがあったとします。

特に体調不良であるとか,そういうことが原因ではないことは伺えている状況です。

こういう時に,多くの上司がやってしまいがちなのが,パフォーマンスが上がらない根本原因(部下が本来的な力を発揮できていない根本原因)についてろくに情報を集めないままに,自分の知識と経験に基づく助言をしてしまうというパターンです。

もちろん,上司は悪気があってこのようなことをしているわけではありません。

部下のパフォーマンスは自分の役割に大いに関係することですから,何とか部下のパフォーマンスを上げてやりたいと思って,良かれと思ってアドバイスをするわけです。

しかし,部下がパフォーマンスを上げられない根本原因についての十分な情報がないまま,『きっとこんなことで悩んでいるのだろう』という「思い込み」の基にそのようなアプローチを行っても,効果性は期待できません。

それでは,妻が何を求めているのか,何を大切にしたいのかという情報を持たずに,自分の思い込みのままに妻と接していた頃の私と同じです。


実際,皆さんが部下の立場だったとしたら,自分が抱えている悩みや,感じている壁などについて何らの情報もないままに,思い込みで助言しようとする上司をどう感じるでしょうか?

あまり好ましくは感じないですよね。

おそらく,そのような上司からのアプローチでパフォーマンスは上がると思う,という方はほぼいないと思います。

これも,「情報」の価値に気づいていない典型例です。

これとは逆に,いきなり自分の助言を押し付けてくるのではなく,まず部下が抱えている悩みや,感じている壁について話を十分に聴いた上で,その解決方法を一緒に考えてくれる上司であればいかがでしょうか。

程度の問題はあるにせよ,少なくとも,このようなアプローチをされて嫌だ,という人はほぼいないのではないかと思います。


『そんなこと言われても,みんな素直に自分のことを話してくれるわけじゃないんだから,そんな簡単に情報なんて集められないよ~』

という方もいらっしゃるかもしれません。

確かにそのとおりです。

情報を集めるという行程は,状況によっては簡単ではありません。

しかし,そこでぜひ気づいてほしいことがあります。

それは,「情報を集めにくくするような人間関係をこれまでの間に築いてきたのは自分自身である」ということです。

つまり,情報が集めにくいと感じるとすれば,それは,まさにそのような状況を自ら作り出した結果であるということです。

そうであるならば,そのような状況の改善も,また自ら進めていく必要がありますね。

いきなり情報を集められるほどの信頼関係がないのであれば,まずは信頼関係の構築が必要でしょう。

相手の関心事に誠実に関心を寄せ,常に笑顔で挨拶と感謝を言葉に出し,相手の言葉に耳を傾ける姿勢が必要です。


ご自身が行っているビジネスにおいて,「情報は命だ」という感覚で仕事をしている人は少なくないと思いますが,このような感覚はもっぱら政治・経済や,同業他社の動き等にばかり向けられがちであり,およそ「人」に対して向けている人はあまりいません。

ですが,皆さんは常に一定の成果を目指して,「人」を相手にして行動しています。

そうである以上,「人」に関する情報もまた,「命」といえるのではないでしょうか。


ぜひ,「人」に関する情報の価値を重視して,今まで行っていなかった情報収集をしてみてください。

必ず新たな発見がありますし,今まで思いつかなかったような問題解決の方法が見えてきますよ(^^)