阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 04.14

相手が求めている時だけ助言(意見)しよう

皆さんは,良かれと思って人にアドバイスをしたのに,なぜか相手から反発的な態度をとられたり,相手が不機嫌になってしまったというご経験はありませんか?

私はあります(^_^;)

今日は,「求めていない人への助言は人間関係を悪くすることが多い」という原則についてお話ししたいと思います。


さて,皆さんは,自分が特に求めてもいないのに,自分の行動に対してあれこれと意見や助言を言ってくる人に対してどんな印象を持ちますか?

「余計なお世話だ」

とか,

「別にあなたの意見は求めていない」

とか,

「また偉そうに自分の武勇伝を語り始めたよ・・・。めんどくさいな~」

などというように感じる方が多いのではないでしょうか。

そりゃそうですよね。

だって,助言や意見が欲しいとは思っていない時に一方的に言われるわけですから,気分が良くなることは稀でしょう。

松下幸之助級の素直さをお持ちの方などは,『どんな他者も自分にとって師となりうる』と考えて,真摯に耳を傾け,

『また一つ新たな発見があった。ありがたい』

というように考えることもあるかもしれません(かく言う私自身,そういう人格を持ちたいという願望を持ってはいます。あくまで願望ですが。)。

でも,そんな人は世の中にはほとんどいません。

ということは,こちら側は『相手にもっと良くなってもらいたい』という善意の気持ち(あるいは上司として,先輩として,親として等の役割に基づく責任の発露)で助言や意見を伝えているのに,かえって逆効果になっているわけですね。

原則中心でものを考える習慣がないと,このように,求めている結果に対してむしろマイナスの影響力を及ぼすことを,それと気づかずにやってしまう人は世の中に実に多くいます(※その具体例については,今後の投稿で改めて掘り下げますね。)

このようなことを書いていながらお恥ずかしい話ですが,以前よりは減ったものの,まだ私も時々やってしまいます(^_^;)


さて,このように,一方が良かれと思ってした助言を他方は煙たく感じ,それが態度に出てしまっている状況って,双方にとって幸せな状況といえるでしょうか。

言えませんよね。

むしろ,双方とも気分が悪くなり,両者間の人間関係にダメージが発生してしまいますよね。

助言した方は,

『せっかく良かれと思って助言しているのに,まともに聴こうとしないなんて困った人だ。』

というような苛立ちや戸惑いを覚える人が多いでしょう。

逆に,助言された方は,

『別にアドバイスが欲しくて話したわけじゃないのに,意見を押し付けられて正直ウザいな・・・』

というような苛立ちを覚える人が多いでしょう。

アドバイスそのものが効果的に働いていないだけならまだしも,これでは人間関係まで悪くなってしまって,負の一石二鳥ですよね。


では,どうすればよいのか。

(簡単とは言えないかもしれませんが)単純な話です。

基本的に,人から求められない限りは助言・意見をこちらからは言わないようにすればよいのです。

「~~についてあなたはどう思う?」

とか,

「AとBという2つの選択肢で迷っているんだけど,あなただったらどっちを選ぶ?」

などというように,相手が明らかにこちらの助言や意見を求めている時にだけ,助言や意見を言うのです。

これなら,相手は確実に聴く耳を持っていますから,助言・意見することが非効果的ということはありません。

また,相手の要望に応えているわけですから,人間関係においてもプラスに働きます。

私は,仕事においては積極的に相手から助言や意見を求められることが多く,あまり問題にならないので,プライベートにおいて特に気をつけています。

仕事の癖が抜けないと,家族や友人と話している時でもつい「意見言いたいモード」に自動でスイッチが入ってしまいがちだったので,上記の「求められない限りは基本的に意見しない」ルールを自分に課すようにしました。

このルールは単純なので,忘れないようにさえすれば遵守は難しくなく,今ではほぼ習慣化しました。


もちろん,相手は明確に「あなたの意見を教えて」と言ってくれないものの,意見を欲しているという時もあります

(人によっては,様々な理由から,本音としては相手に助言や意見を求めたいのに,それを行動に出せない人もいます。)

そんな雰囲気を感じ取った時には,「私の考えを言ってもいいかな?」と相手にこちらから水を向けて許可を求めるという方法が効果的です。

意見を聞いてみたいんだけど,なかなかそのことを言い出せないタイプの人は,このように水を向けてもらえるととても助かるわけです。

また,仮に,相手があまりこちらの考えや意見を求めていなかったとしても,こういう風に相手に許可を得てから話をすると,相手としても,自ら許可した手前話を聞かなければならないという気持ちになっているので,人間関係にマイナスな効果が働く可能性はかなり下がります。


さて,ここまでのお話を読まれた方の中には,

『家族間や友人間はそれでいいかもしれないが,職場ではそうはいかないだろう。知識や経験の浅い部下(後輩)に対してこちらから積極的にアドバイスをしないと,彼らは成長しないし,変なミスをしでかしてしまうことも多くなるのではないか。』

というような思いに駆られた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし,私は職場においてこそ今回の「求められない限りは助言しない」というルールをぜひ活用していただきたいと思っています。

確かに,まだ経験の浅い部下には指導が必要というのはそのとおりだと思います。

ただ,だからといって,部下が求めていないのにいつも上司や先輩がアドバイスをしたら,部下はいつまでたっても「自分自身で考えて動く」という習慣が身に着きません。

これでは部下自身の成長は見込めませんよね。

そうすると,部下の成長を促して成果を上げさせることが上司の役割である以上,上司としてのあなたの仕事にも悪影響を及ぼすことになるのではないでしょうか。

そうではなく,徹底的に部下に自分自身で考えさせることが大事です。

これも原則ですが,人は,他者に言われるがままに行動した場合よりも,自分自身で考えて気づいて,その発想を基に行動した場合の方が,実際に生じた成果(例えば売上げなど)が同じでも,成長度合いが天と地ほども違います。

例えば,ある目的地に辿り着くまでの道のりとして,友人に先導されるままについていっただけの場合と,自分で地図を見て探し回った場合とでは,目的地に辿り着くという成果は同じでも,次に同じ店に行くときのスムーズさ(=成長度合い)には大きな違いがありますよね。

前者は,次に1人でその目的地に行こうとするときにはかなりの方が迷ってしまうと思いますが,後者は逆ですよね(※私は方向音痴なので後者でも2~3回経験が必要ですが(苦笑))。

それと同じことです。

上司に相談するかどうかということも含めて,部下に考えさせるべきなのです。

自分に課せられた短期的目標と長期的目標の両方をクリアするためには,今自分はどのような行動に出るのが最も効果的なのかということを考えてもらいましょう。

その上で,部下が自分だけではなかなかいいアイデアが思いつかなかったり,考えるための視点が足りなかったりするときには,部下の求めに応じて上司としての経験や知識を伝えてあげるとよいでしょう。

だから,上司は,とにかく部下にあれこれと指示や意見ばかりを言うのではなく,「困ったときはいつでも相談してね」という姿勢で,普段から部下が相談しやすいように関係性や環境を整えておくことが重要な役割となるのです。

 


「相手に求められた時だけ助言する」

ぜひ,試してみてくださいね(^^)