2016 06.28
「先生,相手はなんでこんな対応をしてくるんでしょうか。意味がわかりません。」
弁護士をしていると,よく相談者や依頼者から,こんなご質問というかご相談をよく受けます。
大前提として,紛争の相手方の考えていることは,究極的には相手方しかわからないことですし,相手方の思考や行動をこちらがコントロールすることはできないので,基本的に,『相手方が何を考えているのか。』ということは,こちらの行動を決める上で重要なことではありません(※但し,交渉を円滑に進めるために,相手方の思考を可能な限り予測し,それを基に対応を検討するということは時々あります)。
とはいえ,どうしても紛争の相手方が何を考えているのかということは気になってしまうのが人間です。これは本能に近いものだと思いますので,仕方がないと思います。
こういう時に,相手方がどんなことを考えているのかということをそれなりに予想というか,推測することは,不可能ではありません。
では,どんな風に考えればよいのでしょうか。
これはあくまで私の個人的なやり方ですが,以下のような原則を基に考えてみると,おおよそ相手方の行動理由というものがみえてきます。
①「人は常にその人なりに最善の行動をしている」という原則
②人間の行動は,基本的に,「利益を得るための行動」か,「痛みを避けるための行動」の二種類しかない,という原則
③上記の「最善の行動」というものは,周りの人間から見れば,不合理,不道徳であると感じるような行動であるも珍しくはない,という原則
例えば,離婚事件を受任している際に,子供の親権や面接交渉(離婚後に親権を持たない方の親が,子供に会う機会を設けること)の頻度等が争いになった場合,子供が小学生くらいであれば,ある程度子供の意志は尊重されることがあります。
そんなケースで,子供を事実上養育している側の親が,子供に対して,「別居している親に会いたいか。」と聞くと,「会いたくない。」と答えたことから,そのことを相手方に伝える,というような場面がよくあります。
この時,「子供がそんなこと言うはずがない。お前が無理やり言わせたり,洗脳してるんだろ!!」等と言って相手方が反発し,子供をめぐる争いが激化するというような場面もまた,よくあります。
このような場面で,依頼者は,弁護士に対して,「先生,私は洗脳なんてしてないし,子供は本心を言っています。なのになぜ相手はそれを信用しないのでしょうか。意味が分かりません!」というようなご相談をされる場面も,よくあります。
確かに,依頼者からすれば,正直に子供の本心を伝えているだけなのに,「洗脳している」などと身に覚えのない非難を受ければ,怒りを覚えても無理からぬことだと思います。
ただ,上記の3つの原則になぞって冷静に考えてみると,相手方の反応にもそれなりに理由があるのだということが見えてきます。
まず,①の原則に則って考えてみると,おそらく相手方は,何らかの痛みを回避するためにそのような反応をしているのではないか,と考えることができます。
というのも,依頼者に対して「お前が洗脳したんだろ!」などと感情的な反発行為をしても,特に相手方の利益になるようなことは何もありません。そうすると,行動の理由としては,何らかの痛みを回避するところに重きがあるのだろうと推測することができます。
では,ここで想定される相手方の「痛み」とは何でしょうか。
これは色々考えられると思いますが,例えば,「子供に好かれていない自分を認めたくない」というような気持ちが行動に結びついている可能性があるのではないでしょうか。
心の奥底では,子供は自分のことを好きではないかもしれないという恐怖や不安を抱えている中で,さらに,「子供が自分に会いたくないと思っている」という事実まで受け入れてしまったら,精神的ショックが大きすぎる・・・
そんな内心の葛藤や焦燥が,上記のような行動となって現れるのです。
この行動は,本人の「痛みから逃れる」という目的との関係では,本人なりにはその時の行動として最善なのです(原則②)。「そのような行動をせず,別な行動をとる」という選択肢があった中で,あえてその行動を選んでいるわけですから。
ただ,そのような本人の内心的葛藤がわからない他人からすれば,「大した根拠もなくそんな反発的態度をとったって,何もいいことがないのに・・・」というように,当人の行動を合理的ではないと感じます(原則③)。
というように,原則に沿って分析してみると,あくまで推測の域はでないものの,相手方がそのように反発することにもそれなりに理由があったのだろうと考えることはでき,「相手が何を考えているかわからない」という恐怖や不安をある程度減退させることができます。
上記の3原則は,色々な場面で応用が効きますので,ぜひ参考にしてみてくださいね!
※なお,今回例としたようなケースでは,養育している側の親が,(本人は意識していないものの)日頃から相手方への不満や悪口を子供の前で口にすることが多いなどの事情がある場合には,子供が親に気を使って(「相手方に会いたい」と言ってしまうと怒られたり,一緒にいる親がショックを受けてしまうのではないかと察して),本心では会いたいと思っているのに「会いたくない。」と口にしてしまうということもままあります。
このように,本人は全くそのつもりがないのに,普段の行動から,結果として他者(※本事例では子供)の行動に制限をかけてしまっていることも珍しくはないということも,知っておいて損はないと思います。
弁護士をしていると,よく相談者や依頼者から,こんなご質問というかご相談をよく受けます。
大前提として,紛争の相手方の考えていることは,究極的には相手方しかわからないことですし,相手方の思考や行動をこちらがコントロールすることはできないので,基本的に,『相手方が何を考えているのか。』ということは,こちらの行動を決める上で重要なことではありません(※但し,交渉を円滑に進めるために,相手方の思考を可能な限り予測し,それを基に対応を検討するということは時々あります)。
とはいえ,どうしても紛争の相手方が何を考えているのかということは気になってしまうのが人間です。これは本能に近いものだと思いますので,仕方がないと思います。
こういう時に,相手方がどんなことを考えているのかということをそれなりに予想というか,推測することは,不可能ではありません。
では,どんな風に考えればよいのでしょうか。
これはあくまで私の個人的なやり方ですが,以下のような原則を基に考えてみると,おおよそ相手方の行動理由というものがみえてきます。
①「人は常にその人なりに最善の行動をしている」という原則
②人間の行動は,基本的に,「利益を得るための行動」か,「痛みを避けるための行動」の二種類しかない,という原則
③上記の「最善の行動」というものは,周りの人間から見れば,不合理,不道徳であると感じるような行動であるも珍しくはない,という原則
例えば,離婚事件を受任している際に,子供の親権や面接交渉(離婚後に親権を持たない方の親が,子供に会う機会を設けること)の頻度等が争いになった場合,子供が小学生くらいであれば,ある程度子供の意志は尊重されることがあります。
そんなケースで,子供を事実上養育している側の親が,子供に対して,「別居している親に会いたいか。」と聞くと,「会いたくない。」と答えたことから,そのことを相手方に伝える,というような場面がよくあります。
この時,「子供がそんなこと言うはずがない。お前が無理やり言わせたり,洗脳してるんだろ!!」等と言って相手方が反発し,子供をめぐる争いが激化するというような場面もまた,よくあります。
このような場面で,依頼者は,弁護士に対して,「先生,私は洗脳なんてしてないし,子供は本心を言っています。なのになぜ相手はそれを信用しないのでしょうか。意味が分かりません!」というようなご相談をされる場面も,よくあります。
確かに,依頼者からすれば,正直に子供の本心を伝えているだけなのに,「洗脳している」などと身に覚えのない非難を受ければ,怒りを覚えても無理からぬことだと思います。
ただ,上記の3つの原則になぞって冷静に考えてみると,相手方の反応にもそれなりに理由があるのだということが見えてきます。
まず,①の原則に則って考えてみると,おそらく相手方は,何らかの痛みを回避するためにそのような反応をしているのではないか,と考えることができます。
というのも,依頼者に対して「お前が洗脳したんだろ!」などと感情的な反発行為をしても,特に相手方の利益になるようなことは何もありません。そうすると,行動の理由としては,何らかの痛みを回避するところに重きがあるのだろうと推測することができます。
では,ここで想定される相手方の「痛み」とは何でしょうか。
これは色々考えられると思いますが,例えば,「子供に好かれていない自分を認めたくない」というような気持ちが行動に結びついている可能性があるのではないでしょうか。
心の奥底では,子供は自分のことを好きではないかもしれないという恐怖や不安を抱えている中で,さらに,「子供が自分に会いたくないと思っている」という事実まで受け入れてしまったら,精神的ショックが大きすぎる・・・
そんな内心の葛藤や焦燥が,上記のような行動となって現れるのです。
この行動は,本人の「痛みから逃れる」という目的との関係では,本人なりにはその時の行動として最善なのです(原則②)。「そのような行動をせず,別な行動をとる」という選択肢があった中で,あえてその行動を選んでいるわけですから。
ただ,そのような本人の内心的葛藤がわからない他人からすれば,「大した根拠もなくそんな反発的態度をとったって,何もいいことがないのに・・・」というように,当人の行動を合理的ではないと感じます(原則③)。
というように,原則に沿って分析してみると,あくまで推測の域はでないものの,相手方がそのように反発することにもそれなりに理由があったのだろうと考えることはでき,「相手が何を考えているかわからない」という恐怖や不安をある程度減退させることができます。
上記の3原則は,色々な場面で応用が効きますので,ぜひ参考にしてみてくださいね!
※なお,今回例としたようなケースでは,養育している側の親が,(本人は意識していないものの)日頃から相手方への不満や悪口を子供の前で口にすることが多いなどの事情がある場合には,子供が親に気を使って(「相手方に会いたい」と言ってしまうと怒られたり,一緒にいる親がショックを受けてしまうのではないかと察して),本心では会いたいと思っているのに「会いたくない。」と口にしてしまうということもままあります。
このように,本人は全くそのつもりがないのに,普段の行動から,結果として他者(※本事例では子供)の行動に制限をかけてしまっていることも珍しくはないということも,知っておいて損はないと思います。