阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 08.18

リーダーシップとは立場が与えるものではなく,自分から選びとる態度なのです。
※スティーブン・R・コヴィー著「完訳 第8の習慣」241頁


皆さんは「リーダーシップ」とは誰が持つべきものだと思いますか?

企業の経営者?

スポーツチームの監督?

中高生の部活動の部長や主将?

各種団体のトップ?

上に例示した立場の方々は,いずれもリーダーシップが必要な立場であることは間違いないでしょう。


では,リーダーシップとは,そのように,チームや組織を率いる一定の立場を有する人のみに求められるものであって,そのような立場にない人には不必要なものなのでしょうか?

もちろん,そうだという考えの人もいるでしょう。

ただ,コヴィー博士はそのような考え方ではありませんでした。

冒頭に引用したように,コヴィー博士は著書の中で,「リーダーシップとは自分から選びとる態度」であると述べています。

私自身,コヴィー博士の著書を読むまでは,リーダーシップとは,まさに「リーダー」の立場にある者,すなわち,上記に列挙したような「立場」にある人たちに求められる「能力」あるいは「技術」だと考えていました。


しかし,今は異なる考えを持っています。

現在の私は,「リーダーシップ」とは,個人あるいは集団が向かうべき目的を明確に見定め,その目的を達成するための効果的な選択をとり続けようとする「態度」,あるいは「姿勢」であると考えています。


少し掘り下げてご説明しますね。

リーダーシップの「リーダー」という言葉は,「リード」という英単語に由来するものですよね。

「リード」という単語は,日本語では,「導く」と訳されます。

「導く」という言葉は,一般に,一定の目的地に向かって他者を案内したり,目的地にたどり着けるような支援をしたり,有益な情報を提供したりすることを意味していますよね。

そして,「シップ」という言葉は,単体ですと「ship=船」という単語になりますが,「リーダーシップ」とか「スポーツマンシップ」等のように,名詞とセットで使われることで,一定の状態,姿勢,態度を表す言葉となります。

「スポーツマンシップ」はわかりやすい例ですよね。

スポーツを行う能力とか技術という話ではなく,対戦相手や審判などの関係者らとの間における信義公平を重んじる「態度」「姿勢」を表す言葉です。

つまり,「リーダーシップ」とは,言葉そのものの本来的意味合いとして,『一定の目的地へと対象を導く姿勢,態度』であると分析することができるわけです。


では,このように目的地へと「導く」対象は他者に限られるのでしょうか?

自分自身は,「導く」対象にはなりえないのでしょうか?

そんなことはありません。

「セルフ・リーダーシップ」という言葉があるように,自分自身を目的地へと導こうとする姿勢や態度というのは,人間であれば誰しもが持ちうるものです。

まさに,自分自身が,自らの定めた目的の達成に向かって効果的な選択をとり続ける姿勢こそが,自分自身に対するリーダーシップ=「セルフ・リーダーシップ」なのです。

そして,人は誰しも,『より良い人生を送りたい』,『幸せになりたい』という願望(=人生の目的)をもって生きています。

そうであるならば,『幸せになる』という人生の目的の達成に向けて効果的な選択をとり続けようとする姿勢,態度(=セルフ・リーダーシップ)というのは,本来的には全ての人にとって必要なものなのではないでしょうか。


さて,ここまでは言葉の意味から紐解いていく抽象的なお話でしたので,ここからはリーダーシップの本質について具体的に考えてみたいと思います。

例えば,会社の部署において,課長をトップとして5人の社員がいたとします。

あなたはその5人のうちの1人です。

会社自体の目的に沿って部署における達成目標が定められていますが,トップである課長は,その目標の達成に対して効果的なリーダーシップを発揮できていません。

このような時,あなた個人は,自分自身のため,そして部署(ひいては会社という組織)のためにどのようなリーダーシップを発揮できるでしょうか?

『一平社員に過ぎないのだから,リーダーシップなんて発揮しようがないのではないか』なんて思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも,そんなことはありません。

課長のリーダーシップがいまいちなのであれば,課長がもっと効果的なリーダーシップを発揮してくれるようにしたり,効果的なリーダーシップを発揮してくれる人が新たな課長となるようにしたり,あるいは課長がリーダーシップを発揮しなくても部署の目標が達成できるような状態を作ったり等,部署の目標を達成するためにあなたがとり得る効果的な選択をとり続けることに注力すればよいのです。

例えば,私であれば,概ね以下のような選択肢の中から,状況に応じて最も効果的だと思われるものを選びます。

・(課長に発揮してほしいリーダーシップのイメージを自分が持っていることを前提として)課長の自分に対する信頼感が増すように努め,自分の意見を聞いてくれるようになった段階で,課長に求めるリーダーシップ像を伝える。

・(時間をかけても課長の改善は難しいという判断を前提として)自分自身が課長になれるように,会社から評価を受けられる効果的な行動を積み上げる

・(課長のプライドを傷つけないよう気を付けつつ)他の同僚社員の自分に対する信頼を高める努力をし,課長があまり効果的なリーダーシップを発揮しなくてもチームとしてよい成果が出せる状態を作るよう努力する

・(例えば何らかの不正を行うなど課長の態度が著しく問題であった場合に)課長より上の上司との信頼関係を構築し,課長ポジションの人員入替えを提言する(※但し,問題課長への個人攻撃が目的ではないため,嫌がらせのような形にならないように注意する)

パッと思いつくものを列挙しましたが,ケースバイケースで様々な選択肢が考えられるはずです。

もちろん,そもそも長期的に見て自分の人生の目的に対する効果性との関係で,その会社に居続けることは効果的ではないという判断に至った場合は,退職してより効果的な環境を探すというのも選択肢の1つになるでしょう。

ちなみに,どの選択肢も,簡単なものであるなどというつもりは毛頭ありません。相応の苦労を伴うことは間違いないでしょう。

そのような苦労をする必要性があるかどうかも含めて,「効果性」を考えることが肝要です。

 


上記の例で,逆に課長の立場にある場合には,部署のメンバーそれぞれに,部署の目標達成に向けて効果的な行動をとってもらうために自分がとり得る選択肢を考え,そしてその選択をとり続けることに注力すればよいのです。


ちなみに,『何が効果的な選択なのか思いつかない,わからない』という場合には,本を読んだり,セミナーに行ったり,先輩や上司に聴く等して,考えるための情報を増やすところから始めましょう。

それも,あなたの目的を達成する効果的な選択の1つであり,ご自身に対するリーダーシップの発露です。


リーダーシップは,人が自らの幸せを追い求めていくために極めて重要なものであり,また,誰しもが個人として発揮できるものです。


ぜひ,自分自身に対するリーダーシップを自ら選びとる習慣を身に着けていきましょう!