阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 06.16

「相手の考え方に興味を持つ」ことが有する価値

皆さんは,自分と反対の意見であるとか,自分の価値観に照らして受け入れにくいような言動をする人がいた時に,どのような反応をしているでしょうか?

無視する?

批判したり反論したりする?

自分の考えは押し殺して相手の意見に同調するフリをする?

これらの他にも,色々な反応が考えられますよね。

ちなみに,私は上記に例示したいずれの反応もとったことがあります(^_^;)


では,相手が会社の上司や同僚であったり,あるいは共通のプロジェクトを行う仲間であったり,家族であったりした場合,上記のような反応は,相手との信頼関係についてどのような効果を及ぼすでしょうか。

無視したり,有意な対案もなくただ批判したりするのは,ほぼ間違いなく信頼関係を悪化させますよね。

反論も,状況によるでしょうが,相手の意見を打ち負かして自分の意見の正当性を認めさせるような意味合いであれば,やはり信頼関係は悪化の方向に傾くでしょう。

相手の意見に同調するフリをすることは,相手の自分に対する信頼感や印象は悪くならない可能性が高いでしょうが,自分が相手の意見に納得していないのに同調したフリをしているので,自分の相手に対する信頼感は減退しますね。

そうすると,『信頼関係』という相互的な視点でいけば,やはり悪影響を及ぼしているといえるでしょう。


では,自分と反対の意見や,一見するとなかなか受け入れがたい考え方等(以下「反対意見等」といいます)が相手から出てきた場合,どのように反応したら信頼関係を高めることができるでしょうか。

色々な選択肢があるとは思いますが,本稿で私がお勧めしたいのは,「相手の考え方に興味を持つ」ということです。


人は,反対意見等を持っている人に対しては,つい拒否反応を示してしまいがちです。

無理もありません。

人は他者から認めてもらえると幸せを感じる生き物です。

ですから,その裏返しとして,他者から自分とは反対の意見や考え方が示されると,自分が否定されたように感じてしまうわけです。

でも,実はそのような不幸感は,ある行動習慣を取り入れることでほとんど感じないようにすることができます。

それが,「相手の考え方に興味を持つ」という行動習慣です。

これは,相手が反対意見等を形成するに至った背景となっている事情や情報がどんなものであるのかということに興味を持ってみるということです。


人の人格・価値観や行動習慣は,本当にたくさんの経験や情報から様々な影響を受けて,唯一無二の,その人独自のものとして形成されていきます。

そのため,自分と反対の意見を持っていたり,一見して受け入れがたいような考え方を形成するようになるには,それ相応の背景が必ず存在します。

このような背景事情について興味を持ち,考えてみたり,相手から話を聴くということは,自分にとって非常に有益な効果を持っています。


いくつか代表的な効果をご説明しますね。


① 相手との信頼関係が高まる

難しい話ではありません。

誰だって,自分の考え方に興味を持ってくれて,「どうしてそういう意見を形成するに至ったのか詳しく教えて。」と素直に言われたら,悪い気はしませんよね。

それは,人は自分の考え方や意見内容に興味を持って,それを掘り下げようとしてくれる相手に好印象を持つという人間心理の原則があるからです。

一緒に仕事をしていく仲間や,幸せな家庭を築いていく家族との間で,信頼関係は高まるに越したことはないですよね。


② 視野が広がる

自分とは全く異なるものの見方,考え方を知ることで,「そんな考え方もあったのか!」という気付きを得ることができ,自分の考え方の幅を広げることができるわけです。

視野が広がって悪いことは何もありません。

考え方の幅が広がることで,今まで思いつかなかったような問題解決のアイデアを思いつくことができるようになります。

あるいは,視野が広がると様々な人の考え方を受け入れることができるようになるので,自然に寛容さも身に着いていきます。


③ 直面する問題に対する新たな解決策のヒントになる

②とつながる話ですが,ある問題に対する解決策として,A案だけでなくB案という対極的なアイデアが出ることがきっかけとなって,それら2つのアイデアそれぞれの良いとこどりをしたC案があるのではないか,というように,よりよい解決策を考えるヒントが得られることがあります。

1つの考え方だけをベースにしていたのではなかなか新しいアイデアを思いつくことは難しいですよね。

反対意見等は,自分1人では出てきにくい考え方ですので,今まで自分が考えていなかった要素が詰まっており,アイデアを広げるヒントになるわけです。


④ 気分的に楽である

私は,反対意見等が出た時には,一瞬「うっ!」となってしまうことはしばしばありますが,基本的にはチャンスと捉えるようにしています。

上記①~③のような有益な効果を得られる可能性があるからです。

そういう風に捉える習慣が身に着いてくると,イライラしたり,悩んだり,落胆したり,そういったマイナスの感情があまり湧いてこないので,単純に気分が楽になります。


以上,代表的な有益効果をご紹介しましたが,掘り下げれば他にも良い効果はいろいろあります。


「あの人の考え方は理解できない」

「あいつの言動はいつも不合理でわけがわからない」

「あいつの価値観はおかしい」


反対意見等に触れた時に,こんな風に思うこと自体は仕方ありません。

ですが,そこで,だから相手を受けいれない,否定する,排斥する,という方向に舵を切らないでほしいのです。

そのような方向に舵を切ってしまったら,せっかくの有益効果を得るチャンスを全て棒に振ることになります。


人の己を知らざるを患えず,人を知らざるを患うるなり

(人が自分を知ってくれなくても憂えないが,自分が人を知らないのを憂える)

論語における孔子の言葉でも,相手の考え方に興味を持って知ろうとすることの重要性が語られています。


「相手の考え方に興味を持つ」


ぜひ,取り入れてみてくださいね!