阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 03.10

魔法の言葉「無理もない」

皆さんは,「無理もない」という言葉を使うことがあるでしょうか。

私は,ビジネスでもプライベートでも,「無理もない」という言葉をかなり頻繁に使います。

具体的にはこんな感じです。


【ある遺産分割相談の場面にて】

※C=クライアント

C:先生,兄のAが,父の没後に遺産を管理しているのですが,一向に私やほかのきょうだいに分配しようとしないんです。何を言ってものらりくらりで,もう私は兄に腹が立ってしょうがありません!

私:そうですよね。きょうだいで平等に分けるべき遺産について,お兄さんが一向に分配に向けた動きをしてくれない上に,こちらからの要求に対しても誠実な対応をしないとなれば,お腹立ちになるのも無理はないと思います。


【ある会社の顧客クレームトラブル相談の場面にて】

C:先生,うちのスタッフがお客様にご迷惑をおかけするミスをしてしまったのですが,それに対するお客様の要求がどうも過大な気がしています。いくらこちらに落ち度があって,あちらはお客様とはいえ,なんでもかんでも許されるものなのでしょうか?トラブルを早期に終わらせるためには多少のお金はやむを得ないかもしれないと思いつつも,どうにも腑に落ちない部分があって・・・。

私:こちらに落ち度がある話とはいえ,それにつけこんで過大な要求をしてよいのか,という疑問は当然に湧いてきますよね。そんな疑問を感じている状況であれば,こちらが必要以上に折れて解決する方法にはどうにも納得いきかねるというのは無理もない感覚だと思います。実際,法律上も,こちらに過失があるからといって,何でもかんでも要求してよいということにはなっていませんから,その点はご安心ください。


お読みいただいてお気づきだと思いますが,私は,主としてクライアントのお話を伺う際に,クライアントが感じていらっしゃる様々な感情や思いについて,実際にクライアントのお立場であればそのように感じられるのは十分理解できると考えられる際に,「無理もない」という言葉を用いています。

実際,上記のような場面であれば,それぞれのクライアントが感じている怒りや憤り,疑問や不安等は,それぞれの置かれている立場や状況からしてまさに「無理もない」といえるのではないでしょうか。

以前の投稿にて,私は,「傾聴」とは単に注意して相手の話を聞くということにとどまらず,相手の身になって,共感して聴くことであるという趣旨のお話をしました(詳しくはこちらをご参照ください)。

この「共感による傾聴」を実践するにあたって有効な視点となるのが,「無理もない」という感覚です。

「無理もない」と思えるということは,まさにその人の立場を具体的に想像し,その人の感じたことや思ったことについて,その人自身になったかのように考えることができていることにほかなりません

(ちなみに,言葉で「無理もないですね~」と言っているだけではダメですよ!本当にその人の気持ちについて,自分がその立場だったら腹も立つだろうなとか,悲しいだろうなとか,そういうことが想像できていないといけません。)


実際,世の中の多くの場面で,1つ1つの出来事に対してそれぞれの当事者の方々に生じる感情や思いは,「無理もない」と思えることがほとんどです。

同じ人間だから,当然といえば当然だと思います。

仮にそう思えないことが多いとしたら,それはご自身の価値観や固定観念に縛られていて,思考の柔軟性が失われている証拠です。

そのこと(自分自身が固定観念や自己の価値観の枠に縛られていること)に気づくだけでも,成長への大きな一歩になるでしょう。

ぜひ,「共感による傾聴」を実践するための指標として,相手の話に「無理もない」と思えるかどうかを考えてみてください。

そして,実際に,「無理もないなぁ」と感じたことを相手に伝えてください

その時には,どうして「無理もない」と感じるのかも合わせて伝えられるとよりgoodです(^^)


魔法の言葉「無理もない」を活用して,ぜひ共感による傾聴を実践してくださいね!!