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20172.3

信頼関係の薄い相手に納得してもらう方法③~真の「傾聴」とは~

思いのほか長くなってしまっておりますが,信頼関係の薄い相手に納得してもらう方法シリーズの3回目となります。

本当はこの3回目で終わる予定でしたが,書き出してみると,とても本稿では終わらないことに気づいたので,もうしばらくお付き合いください(苦笑)。

前2回では,元々信頼関係が厚かった人ほど,信頼関係が薄くなった場合にはより慎重かつ誠実なアプローチが必要となるという原則と,その理由についてお話ししてきました。

今回以降は,そのような前提を踏まえて,「慎重かつ誠実なアプローチ」として具体的にどんなステップを踏んでいけばよいのかについてお話ししていきたいと思います。

(※シリーズ①はこちら,シリーズ②はこちらです。)

 

まず本稿では,第1ステップである「傾聴」について掘り下げたいと思います。

さて,皆さんは,「傾聴」とはどのような行動だと認識されているでしょうか。

「一生懸命相手の話を耳を傾けること」というような,やや抽象的な意義と考えていらっしゃる方はいませんか?

そのような認識を前提とした場合,「これから相手の話を傾聴してください。」というミッションを課されたら,具体的にどのような行動をとられるでしょうか。

おそらく,頷いたり相槌をうったりしながら,ひたすら相手が話すのを聞く,という感じになるのではないでしょうか。

もちろん,それはそれで全く悪いことではありません。

むしろ,人は,単純に他者に話を聞いてもらえるだけで,気持ちがすっきりしたり,考えていることが整理できたりというプラス効果が発生します。

ですから,相手の話をまともに聞かずに,話の途中途中で遮って自分の意見を言ったり,反論したりするというような場合に比べれば,単純に相手の話を聞き続けるということは,相手との信頼関係を回復したり増強したりするという目的との関係では比較的効果性の高い行動といえます。

 

しかし,それは本当の意味での「傾聴」ではありません。

真の「傾聴」とは,相手そのものになりきって,相手の喜怒哀楽や,その他の心の動き等を生々しく想像し,同じ気持ちとなって共感しながら話を聴くことです。

これは,単に相手の話を淡々と聞いているだけでは辿り着けない境地です。

相手の年齢,性別,職業,家庭環境,その他現在置かれている境遇,そして(わかる範囲でいいので)過去の経験等も踏まえて,そのような相手の立場に身を置き,相手の心境を追体験するようなイメージです。

例えば,妻Bさん(専業主婦)と子供(乳児)を持つAさんという男性が,妻Bさんの話を傾聴するという場面を考えてみます。

このような場合,AさんがBさんのお話を「傾聴」するためには,どのようなことを想像する必要があると思いますか。

ぜひ,読み進める前にちょっと考えてみてください。

 

 

例えば,このような場合,Aさんは以下のようなことを想像していく必要があります。

・Bさんが普段子育てでどのような苦労をしているか

・専業主婦という立場上,経済的側面で夫頼みとなっていることにどんな思いを抱えているか

・専業主婦であるBさんから見れば,自分(Aさん)の行動はどのように見えているか

代表的なものを上げましたが,他にも,Aさん・Bさん夫妻の境遇によってもっと様々な要素が想像できるでしょう。

さて,このような想像をする上で重要なポイントがあります。

それは,原則として,相手は現在の境遇において何かしら大変さや辛さを感じているはずだということを前提とすること(=相手のマイナス感情を前提とすること)です。

上記の例でいえば,

⑴ 日々の子育てはとても大変で,ストレスもかなりたまるはずだ

⑵ 専業主婦は,経済的側面が夫に頼りきりになるので,(人によって程度の差はあれ)不安や負い目を感じることがあるはずだ

⑶ 専業主婦の立場からすれば,子供につきっきりにならず毎日外で活動でき,定期的に外で食事したりお酒を飲んだりしているという夫の行動は羨ましく感じ,また,時としてそれは『夫ばかり伸び伸び自由に良い思いをして!!』というような苛立ちともなるはずだ。

といったところが考えられるでしょう。

ここ,本当に本当に大事です。

このポイントを外すと,その瞬間に「傾聴」状態ではなくなり,むしろ危険状態に突入します

例えば,上記の例で,相手のマイナス感情を前提とせずに想像を進めてしまうと,

⒜ 毎日子供と戯れて,仕事のストレスを感じることもなく,家で気楽に過ごせて楽しい

⒝ 自分自身で稼がなくても夫の稼ぎで生活ができて楽だ

⒞ 自分は専業主婦で毎日子供と家で気楽に過ごしているのだから,仕事で疲れたりストレスを感じている夫が,仕事の付き合い等もあって飲みに行ったりするのは大して気にならない

というような想像に至ってしまう恐れがあります。

 

皆さん,ここで一度思い出してください。

本稿は,「信頼関係の薄い相手に納得してもらう方法」シリーズでしたね。

信頼関係が薄くなってしまっているということは,妻Bさんは,Aさんに対して何がしかの不満を抱えているでしょうし,日々の生活においても様々な苦労を感じているはずです。

そうでなければ(=日々不満なく楽しく過ごせていれば),家族との信頼関係が希薄となるようなことはまず考えられませんよね。

さて,そのことを踏まえてもう一度考えてみましょう。

そんな信頼関係が希薄になっている状況で,上記⒜~⒞のようなお気楽過ぎる想像をしながら話を聞いたとして,それが相手に対する「傾聴」になると思いますか。

断言します。

絶対になりません。

むしろ,「この人は,表面上は話を聞いてるような素振りをしてるけど,私の気持ちを何もわかってない!!」と思われて,より信頼関係が破壊されていくことになるでしょう。

こんなまずい展開にならないためにも,必ず,相手のマイナス感情を前提として,相手の立場を可能な限りリアルに想像するようにしてください。

 

それと,もう1つ重要な注意点をお伝えします。

それは,「相手の立場に身を置く」という考え方を,「自分が相手のような状況だったらどうするか」という考え方とはき違えないようにするということです。

おそらく,世の中の大半の人が,このような誤解をしています。

「相手の立場に身を置く」というのは,いわば自分が相手そのものになり替わった状態を考えるということであり,自分自身という人格はそのままに,相手と似たような状況下に置かれた場合に自分だったらどうするかを考えることでは決してありません

この2つは全然違います。

例えば,XさんがYさんにお金を貸したところ,返済期限を過ぎてもYさんがなかなか返してこないという状況だったとします。

Xさんは,どんな風にアプローチすれば,Yさんからお金を返してもらえるだろうか,と悩んでいました。

このようなXさんに対して,「XさんがYさんの立場だった場合に,借りた人に返したいという気持ちになるようなアプローチをしてみたらどうですか。」とアドバイスしたとします。

この時,「自分だったらそもそも返済期限を過ぎても返さないなんていう不義理はしないなぁ。」となどとXさんが考えたとしたら,それはYさんの立場に身を置いているのではなく,単に,自分が人からお金を借りたらどんな行動をとるか,を考えているだけです。

そうではなく,

「Yさんのように,約束の期限どおりに返済ができず,貸主から催促を受けたら,かなり焦るし,気まずいはずだよな。それに,今現在返済のあてがなかったとしたら,そのことを貸主に言って非難されるのも怖くて,正直,貸主と接触したくないという気持ちになっちゃうよな。」

というように,現に相手方が置かれている境遇と,そこから想像される相手方自身の心境をなるべくリアルに想像し,共感することが肝要です。

以上のように,真の意味で相手の立場になりきって相手のマイナス感情に共感しながら話を聴くことが,真の「傾聴」です。

スティーブン・R・コヴィー著「7つの習慣」においても,「共感による傾聴」が人の話を聞く姿勢として最高レベルであり,また,「共感による傾聴」とは,「まず相手を理解しようと聴くことであり,相手の身になって聴くことである。」と説かれています。

この真の「傾聴」は,当然ながら,ビジネスにおいても,対顧客,対上司,対従業員,対取引先等々あらゆる場面で活用でき,また,その相手方との信頼関係を深めるにあたってとても効果的です。

ぜひ,本稿を機に実生活で実践してみてくださいね!

 

次回は,第2ステップ「謝罪」以下についてお話しします。

「え!?謝罪ってどういうこと!?」と思った方は,ぜひ次回もお読みいただければ幸いです(^^)