阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2016 09.08

なぜwin-winが最良なのか

私は弁護士として日々多くの方の紛争解決に携わっていますが,お仕事をさせていただく上で常に念頭に置いていることがあります。

それは,「いかにしてこの問題をできる限りwin-winの形で決着させることができるか」という視点です。

『一方当事者たる依頼者の代理人である弁護士が,依頼者のwinのみならず相手方のwinまで考える必要などあるのか。』
『むしろ,依頼者と対立関係にある相手方のwinを考えるなど,依頼者の利益に反する行為ではないのか。』

そんな風に疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし,私はそのような疑問に対して明確に「NO」と言い切ります。

なぜなら,原則として,依頼者にとって,win-winは最大最良の結果であり,win-winを目指すことこそが,弁護士として依頼者の最大利益を目指すことに他ならないからです。

例えば,労使間紛争を例に考えてみましょう。

会社がAさんという従業員を解雇し,Aさんはその解雇が不当であるとして裁判を起こしたとします。

この時,会社側に立てば,自分たちの解雇の正当性を主張し,仮に裁判所に認めてもらうのがやや厳しい見通しであれば,給与の数か月分を支払ってでもAさんを辞めさせるというのが一般的な対応方針(目標)だと思われます。

これに対して,Aさんの側に立てば,解雇の不当性を主張し,Aさんが強く職場復帰を望んでいるのであれば職場復帰を,そうでなければなるべく高額の金銭的譲歩を引き出しての解決を目指すのが目標となるでしょう。

いずれも,一方当事者にできるだけ利益のある解決を目指しており,それ自体は全くおかしいことではありません。

ただ,自分たちがたどりうる道筋が二者択一(自分たちの主張か,相手方の主張か)になってしまっていることに問題があるのです。

このような場合に,一度は解雇という縁切りのきっかけがあったとはいえ,そのような経緯を乗り越えて,改めて会社もAさんもwin-winとなる道筋を探そうという発想を持つ人はなかなかいません。

しかし,考え方や視点を変えてみれば,会社がAさんに活躍の機会を与え,Aさんがこれに答えて会社に貢献してくれる道筋が残っている可能性は十分に存在するはずです。

だって,世の中には,創業79年,障害者雇用を始めて57年という歴史を持ち,現在の障害者雇用率が70%を超える会社があるんですよ(http://www.rikagaku.co.jp/)

それならば,会社の不当解雇に対して断固戦うようなバイタリティのあるAさんを会社が活用して,会社の発展に貢献してもらう余地は十分にあると思いませんか?

「そんなのは究極の理想論だ。Aが人格的に著しい問題のある人間だったら,経営者としては活用のしようもないんだからどうしようもないだろう。」

というお考えの方もいるかもしれませんね。

しかし,そもそも最初にAさんを雇ったのは他ならぬ会社であり,経営者のはずです。

ということは,少なくとも雇った段階においては,Aさんが活躍してくれる可能性を感じていたはずです。

そして,活躍の場は,何も経営者だけで考える必要はないのです(というか,経営者だけで考えようとすると行き詰る可能性が高いです)。

Aさん自身にも,どうしたら自分が会社に貢献できるのかを真剣に考えてもらえばいいのです。

Aさんだって,今の職場を辞めるというのは,曲がりなりにも一定期間無職の状態が続くリスクを負うことになるわけですから,今の職場で生き生きと働けるチャンスがあるのなら,その道を真剣に考えることについて十分インセンティブはあるはずです。

このように,問題を1つ1つほどいていけば,会社は裁判対応や解雇維持のために余計な労力やコストをかけることなく,Aさんという貴重な戦力を得ることができるのです。

他方,Aさんも,無職状態という不安定な状況に至ることなく,自分が活躍できるステージで存分に力を発揮できるようになるわけです。

このような結果と,当初に会社とAさんがそれぞれ自分の利益として目指そうとしていた結果,どちらが,会社もしくはAさんにとってより大きな価値をもたらしているといえるかについて,おそらく異論はないはずです。

だから私は,依頼者にとってwin-winこそが最良の結果と確信し,それを常に模索するようにしているのです。

もちろん,このような展開はあくまで全てうまくいった場合の理想的なものであり,どんなケースでもこのような素晴らしい結果に至ることができるとまでおめでたいことは申し上げません。

ただ,そもそもそのようなwin-winの道筋を探そう,そしてその道筋を目指そうと思わない限り,絶対に上記のような最良の結果に辿り着くことはできません。

「自分は今他者との間でこんな問題を抱えているが,それをwin-winで解決することなどできるのか!?」と思われる方は,ぜひ一度お話を聞かせてください。

まさにそのように考えた瞬間こそ,パラダイムシフトが起き,人としての枠が拡大する(=人格的にレベルアップする)端緒になりますよ(^^)!