阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2016 06.19

7つの習慣シリーズ③ 第3の習慣「最優先事項を優先する」

スティーブン・R・コヴィー博士の「7つの習慣」では,第1~第3の習慣を「私的成功の原則」と呼んでいます。

つまり,第1~第3の習慣を実践し続けることで,個人として自立し,自分らしい自分(理想とする自分)でいられるようになる(=個人としての成功に至る)ということです。

その3つの原則のラストが,第3の習慣「最優先事項を優先する」です。

第1の習慣は,「主体的であること」であり,自立するためのマインド(考え方)セットに関する原則でした。

第2の習慣は,個人として成功するための具体的ビジョン(人生におけるゴール,目的・目標)を設定するという原則でした。

第3の習慣は,第2の習慣で定めた自らのミッションステートメントに従って,個人として成功するために最も優先すべきことに時間を割く,というタイムマネジメントに関する原則です。

第3の習慣で推奨するタイムマネジメントの肝は,以下のような「時間管理のマトリクス」を使いこなすことにあります。



時間管理のマトリクスは,時間を割くべきタスクについて,重要度と緊急度の有無に応じて4つに分類するフレームワークです。

時間管理のマトリクスによるタイムマネジメントの肝は,重要ではない第3象限及び第4象限を無くし,第2象限をできる限り拡大していって,その結果として第1象限も可能な限り圧縮させることにあります。

なぜでしょうか。

それは,ミッションステートメント達成に直結するタスクは,ほとんどが第2象限だからです。


具体例で考えてみましょう。

例えば,経営者として会社を発展させたいというミッションを掲げたとします。

この場合,第1~第4象限にはどんなタスクが入るでしょうか(※なお,どんなことが第1~第4象限に入るかは,人それぞれ異なります。それは,個々人における時間管理のマトリクスの中身を決定づけるのが,第2の習慣,すなわち個人のミッションステートメントだからです)。

例えば,以下のような感じになるのではないかと思います。

第1象限=当面の資金繰り,クレーム対応,納期(締切)の近い仕事等

第2象限=有能な人材の採用・育成,中長期的ビジョンの構築,新たな事業構想,長期的なキャッシュフロープラン,人脈・ネットワークの拡大等

第3象限=多くの電話,急な来客,日常的な飲み会の誘い,ちょっとした頼まれごと等

第4象限=過剰な休息,息抜き,愚痴を言う,誰かの悪口で盛り上がる等


いかがでしょうか。

まず,第3象限と第4象限は,「会社の発展」というミッションに直結しないことは一目瞭然ですね。

では,第1象限と第2象限はどう分析するべきでしょうか。

第1象限は,緊急かつ重要なことですから,必ずやるべき優先事項ではあります。
しかし,常に第1象限のタスクばかりをこなしている状況は,必ずしも「会社の発展」というミッションとの関係で,最優先事項を十分にこなしているとはいえないのではないでしょうか。

また,第2象限のタスクを優先的にこなしていくことで,第1象限のタスクを無くしたり減らしたりすることにつながり,ミッションの達成に向けた成長の安定性が増大するというメリットもあります。

例えば長期的なキャッシュフロープランを実践することにより,当面の資金繰りという第1象限を無くしたり減らしたりすることができ,より余裕のある安定的な経営が実現します。

あるいは,有能な人材の採用・育成に注力することで,人材不足による緊急対応の増加や,問題社員への対応といった第1象限を無くしたり減らしたりすることもできます。

このように,第2象限のタスクを優先的にこなしていくことは,ミッション達成のために最も重要なことといえるわけです。

と,ここまでの抽象論は概ね皆さん腑に落ちるかと思うのですが,いざ実践するにあたってよくあるつまづきポイントがあります。

それは,『自分にとっての第2象限を明確にしないままにタイムマネジメントを行おうとしてしまう』ということです。

このような状態に陥っていると,第4象限を減らすという点には対応できるのですが,第2象限を拡大するということが進まず,結局第1象限と第3象限を行ったり来たりしながら,慌ただしい割にあまり個人としての成功へと近づいてはいない,などという状況になってしまいかねません。

では,なぜこのような状態に陥ってしまうのでしょうか。

これは,『ミッションステートメントが固まっていない』ということに尽きると思います。

ミッションステートメントが固まっていれば,自ずと,今の自分が何をすべきか,5年後どうあるべきか,10年後どうあるべきかという中長期的ビジョンが形成されていきますので,そのために必要な第2象限もどんどん明確化していきます。

初めて時間管理のマトリクスの概念をお知りになった方も,既に取り入れていたけれど,イマイチ自分のタイムマネジメントがうまくいっていないような気がする方も,まずはご自身のミッションステートメントの明確化に注力していただくのが有効です。

第1の習慣,第2の習慣,第3の習慣は,その順番で,後に続く習慣を形成するための基盤となります。

そのことをぜひ意識してみてくださいね!!