阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2016 06.17

おススメビジネス書② デール・カーネギー著「人を動かす」

おススメビジネス書第2弾は,いわずと知れた名著オブ名著,「人を動かす」です。

これは読んだことのある方も多いのではないでしょうか。

アマゾンのレビュー数は今日(平成28年6月17日)現在で489件,平均評価は4.6です。

489人中384人が5つ星をつけています。ここまでの数字で,かつ古典であることも踏まえれば,まあステマの可能性はないとみて良いでしょう(笑)。

もちろん,私の人生バイブル10選の1冊にも入っています。

弁護士の仕事は,結局のところ,『いかにしてクライアントの目的達成のために効果的に人を動かすか』に尽きると言っても過言ではありません。

紛争解決事案であれば,必ず紛争の相手方がいますから,相手方に何らかのアクションをとってもらうことが目的になります。

例えば,お金を払ってもらう,物を返してもらう,不具合を修理してもらう,離婚に同意してもらう,謝罪してもらう,迷惑行為をやめてもらう等々,枚挙に暇がありません。

また,紛争を予防するための対策を構築することを含めて,クライアントの経営や業務にプラスになるようなアドバイスをすることについても,アドバイスすることそのものが仕事ではありません。

クライアントにより良い経営やより良い人生構築につながるアクションを起こしてもらうことが目的なのであって,アドバイスはあくまで手段の1つに過ぎません(ちなみに,以前の私はそのことがわかっておらず,クライアントにアドバイスを求められたから,アドバイスをする,というような受身的なサービス提供しかできていませんでした。)。

つまり,いくら有益なアドバイスをしたとしても,クライアントがそれを聞いてアクションを起こし,成果を上げるという結果に至らなければ,目的を達したことにはならないのです。

このように,「人を動かす」ことについての知識と知恵は,私たち弁護士にとって必須の要素なわけですね。

さて,話をデール・カーネギーの著書に戻しましょう。

この本の価値は,目次に明確に表れています。以下に目次を引用します。

◇PART1 人を動かす三原則
1 盗人にも五分の理を認める
2 重要感を持たせる
3 人の立場に身を置く

◇PART2 人に好かれる六原則
1 誠実な関心を寄せる
2 笑顔を忘れない
3 名前を覚える
4 聞き手にまわる
5 関心のありかを見抜く
6 心からほめる

◇PART3 人を説得する十二原則
1 議論を避ける
2 誤りを指摘しない
3 誤りを認める
4 穏やかに話す
5 〝イエス〟と答えられる問題を選ぶ
6 しゃべらせる
7 思いつかせる
8 人の身になる
9 同情を寄せる
10 美しい心情に呼びかける
11 演出を考える
12 対抗意識を刺激する

◇PART4 人を変える九原則
1 まずほめる
2 遠まわしに注意を与える
3 自分の過ちを話す
4 命令をしない
5 顔をつぶさない
6 わずかなことでもほめる
7 期待をかける
8 激励する
9 喜んで協力させる

◇付録 幸福な家庭をつくる七原則
1 口やかましく言わない
2 長所を認める
3 あら探しをしない
4 ほめる
5 ささやかな心尽くしを怠らない
6 礼儀を守る
7 正しい性の知識を持つ

いかがでしょうか?
まあ,実際目次だけ見てもよくわからないものも多いとは思いますが,「確かにそうだなぁ」とうなづける項目も,少なくとも2~3個はあるのではないでしょうか。

(ちなみに,この目次を見て「当たり前のことしか書いてないじゃん。」と思った方は素晴らしいです。「当たり前」と思えるくらい全ての項目を実践できている人はなかなかいないと思います。)

いずれ,いくつかの項目については,私自身の体験談を交えて解説めいたお話もしたいと思っていますが,今日は1つだけとりあげます。

それは,「人を説得する十二原則」の「1 議論を避ける」です。

皆さんは,人を説得しようとする際に,相手から何らかの反論が来た結果,つい「どちらの考えが正しいか」というような観点で相手と議論してしまうということはありませんか。

私は,この本を読むまでは実に頻繁に,説得したい相手と議論してしまっていました。

「でも,説得しようとした相手方から反論が来たら,その考え方では相手にとってよくないと思って説得している以上,議論するのは当然じゃないのか?」

そう思う方もいるかもしれません。

では,あなたが誰かに「こうした方が良い。こうすべきだ。」と言われた時に,その助言に納得がいかず議論になったとして,議論に負けてしまったらおとなしくその助言に従いますか?

むしろ,強引に相手の考え方を押しつけられたような気分になって腹が立ち,助言に従う気持ちになるどころか,逆に相手に悪感情を抱くのではないでしょうか。

※ここで「議論に負ける」というのは,あなたが相手の助言に十分納得し,行動を変える決意をすることを指すのではなく,理屈や根拠といった面で反論がしにくくなってしまった(ものの,相手の主張に十分に納得しているわけではない)状態のことをさしています。

本来,議論というのは,様々な意見や考え方を出し合って,個々人が持っていなかった(思いついていなかった)新たなアイデアや考え方を見つけるというシナジーを起こすために行うべきであって,相手を説得することには何ら効果的な方法ではありません。むしろ逆効果です。

ということを教えてくれたのが,「人を動かす」でした。

こんな風に,目からうろこがボロボロ落ちる内容ばかりの本です。

今年の1月に文庫版が出て,1000円も出さずに買えるようになりました(上記リンク先をご参照ください。)。また,電子書籍も出ています。

ぜひぜひご一読を!!