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20183.15

「経験則」と「原則」

私は,自分の行動を選択する際の判断基準としていつも念頭に置いていることがあります。

それは,

「この選択は,個人や人間関係に関する原則に照らして,自分の目指す成果の達成に対して効果的かどうか?」

という基準です。


このような「効果性の原則」をベースとする考え方については,弁護士としての自分にもとてもなじむことを実感していました。

ただ,その理由については,これまであまり言語化することができていませんでした。

『クライアントも相手方も,裁判官もその他の司法関係者も,みんな人間である以上,個人と人間関係に関する効果性の原則をベースにした考え方が活かせるのは当然だろう』

という程度に考えていました。

それはそれで間違ってはいないと思うのですが,最近,もう少し掘り下げた視点が見えましたので,今回はその点についてお話をしたいと思います。


私たち弁護士が,裁判において,こちらの主張している事実内容が真実本当にあったことなのだ,ということを認めてもらうために行う作業として,

「こちらの主張している事実内容が,特定の証拠や事情から経験則に照らして合理的に推測できる」

ということを説明するというものがあります。

例えば,100円ショップや雑貨屋さん等で簡単に購入できる「阿部」というハンコが押されている書類と,私が役所に印鑑登録をしている「実印」の押された書類があったとして,真実私自身がその書類の内容に納得してハンコを押したのだろうという信用性が高いのはどちらだと思いますか?

皆さんほぼ間違いなく,実印が押されている方と考えますよね。

これはどうしてでしょうか?

私たち弁護士や裁判官は,それを「経験則」という言葉で説明します。

具体的には,

「(盗まれる等の例外的場面を除いて)一般的に本人しか持ちえない実印が押されている以上,経験則に照らして,その書類の内容について本人が納得して印鑑が押されている可能性が高い」

というような言い回しをしたりします(あくまでほんの一例ですが)。

ここで出てくる「経験則」というのは,「経験」という言葉が使われていますが,別に各弁護士や裁判官の個人的な経験に基づくものではありません。

「我々が生きる社会一般において,多くの場合に当てはまる法則」というような意味合いで使われています。

上記の例でいえば,「役所で印鑑登録している実印のような大事な印鑑は,本人の意思に反して他人が勝手に押したりすることはあまりない」という社会一般的な法則があると考えるわけですね。

だから,極端な話,弁護士や裁判官自身は実印を持っていなかったり,持っていても使ったことが無いということがあったとしても,上記のような経験則に基づいて事実を見極めるという作業をします。


この間,ある本を読んでいて,上記のような「経験則」に関する話が出た時に,ふとこんな風に思いました。

『考えてみたら,うちの業界(法曹界)で使っている「経験則」は,「7つの習慣」でコヴィー博士が提唱している「原則」にかなり近いんじゃなかろうか・・・?』と。

「原則」というのは,「多くの場合に共通に適用される基本的なきまり・法則」というような意味で使われています。

(ちなみに,私が「原則」という概念について説明するときは,「一定の原因が存在したときに,それによって一定の結果が発生するという関係がほぼ成り立つ法則」というような言い方をしていますが,まあ言い回しの違いだけで,本質的には同じです。)

かたや,先ほど述べたように,法曹界においては,「経験則」は,「我々が生きる社会一般において,多くの場合に当てはまる法則」というような意味合いで使われています。

うん,やっぱりほぼ同じような意味合いで使われていますね。

どうりで「原則」が自分になじむわけです。

弁護士として仕事をする中でごく当たり前に用いている考え方(=経験則に基づいて事実を見極めるという考え方)とかなり共通していたのですから。


さて,この「経験則」と「原則」の共通点に関するお話しですが,皆さんのお仕事や私生活ではどうでしょうか?

考えてみてください。

皆さんがお仕事をする中で,ご自身がお持ちの「経験則」に照らしてビジネス上の判断したり,部下の指導をしたりすることはありませんか?

おそらく,ごく当たり前のようにやっている方が多いと思います。

そして,『そのような「経験則」に照らした判断や指導をしているはずなのに,思いのほかうまくいかない』という経験をされている方も多いのではないかと思います。

なぜでしょうか。


様々な原因が考えられますが,ここでいう「経験則」が「社会一般において多くの場合に当てはまる法則」ではなく,読んで字のごとく『自分自身が経験してきたことから見いだされる法則』だから,ということも原因の1つとして十分に考えられると思います。

「自分は過去の経験上,●●という行為をしたときに××という結果を得た。だから今度も,●●という行為をすれば××という結果を得るはずだ」というような,自分だけのオリジナル法則ということです。

これが実際に「社会一般において多くの場合に当てはまる法則」と一致していれば問題はありません。

仕事ができて人望も厚い方は,まさにこういう特徴(=自分の経験則と原則が一致しているという特徴)を有しているはずです。

ですが,ごく一部の例外的な方を除いて,何の努力もなしに自分の経験則が原則と一致するというようなことはほとんどありません。

そして,そのことに気づかないまま,『自分の経験則が通じない相手の方がおかしい』というような発想になってしまい,結果として成果に結びつかないというケースは世の中に非常に多いと思われます。

 

私も弁護士ではありますが,「7つの習慣」や論語,アドラー心理学等,人間の本質に関する学びがなければ,自分の経験則を原則と一致させることは到底無理であったと思います。

(もちろん,今も完璧にはほど遠いですが。)


自分の判断基準となっている「経験則」と,人間の本質に関する「原則」の“ずれ”に気付くことができ,「原則」の方に判断基準を合わせていくことができれば,成果は自ずからついてきます。

自分のオリジナル経験則には成果に結びつく法則性があるとは限りませんが,「原則」にはきちんと法則性があるからです。

 

例えば,松下幸之助は晩年,徹底的に「素直さ」を追究されていました。

それは,彼が,「素直」であることは自身の成長や経営者としての適切な判断に結びつく効果性があるという「原則」を深く理解されていたからだと思われます。

実際,

・素直に人の話を聴いてたくさんの情報を柔軟に受け止めつつ,その情報を活かそうとする人

・素直に人の話を聴くことができず,自分の従来の考え方(それこそ経験則など)に固執して,新しい情報が入ってこない人

どちらが成功に近づきやすいかは考えるまでもありませんよね。


「自分の経験上はこうすればうまくいくはずなのに,なかなか成果に結びつかない・・・」

とか,

「どうすればうまくいくのかについて,自分の経験則すらない・・・」

というようなお悩みをお持ちの方は,ぜひ,ご自身が求める仕事上の成果や改善したい人間関係について効果的な原則を学んだり,考えたりしてみてください。

「7つの習慣」のような自己啓発的な学習は苦手という方であれば,歴史から学ぶのも1つの手です。


理想は,自分の「経験則」と「原則」が一致している状態です。


私もまだまだ道半ばですので,もっともっと「原則」についての理解を深めたいと思っています。

一緒に頑張りましょう!