阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属 阿部竜司法律事務所 札幌弁護士会所属

2017 09.01

今回は,なぜ自分を変えることで他者が変わるのか,というお話の後編をお送りいたします。

後編といっても,前編を投稿してから1か月近く経ってしまいましたので,前編をご覧になっていた方でも覚えている方はほとんどいらっしゃらないと思います。遅ればせながらでお恥ずかしいかぎりです(^_^;)

(ちなみに前編はこちらです。)


メインとなる原則は,「自ら知り,気づいて,決意しない限り人は絶対に変わらない」という原則です。

さて,皆さんはどんな時に,今までやっていなかったことを新たにやってみようと思い,そして実際に行動しているでしょうか。

おそらく,本で新たな知識や情報を得たり,あるいは人から忠告やアドバイスを受けたりしたことをきっかけにして新たな行動をとる(=自分を変える)という人がほとんどではないかと思います。


では,そのように新たな行動をとろうと決める時,皆さんは他人から脳内の操作を受けているようなことはあるでしょうか?

絶対にありませんよね。

人は,他人を操り人形のようにコントロールすることはできません。

洗脳やマインドコントロールなどという概念は存在しますが,それらとて,脳内を強制的に操作しているようなものではなく,あくまで,言葉や行動を通じて,相手に一定の思考や行動を促すものにすぎません。

つまり,人が今まで取っていなかった行動を選択するとき(=自らの思考や行動を変えるとき)には,必ず,その人自身が自ら考えて,決断して,行動を選んでいるのです。

そうであるならば,人に変わってもらいたい(=何らかの新たな行動をしてもらいたい)というときに注力すべきことは,その人が自ら行動したくなるように環境を整えたり,決断を促すことに有益な情報を提供したり,こちらが提供する情報を重要な判断材料にしてくれるような信頼感を持ってもらえる人間になるように努力したり,あるいは相手との信頼関係を厚くすること,といえるはずです。

間違っても,「あーすべきだ,こーすべきだ」と,こちらの「べき論」を他人にくどくどと語る行為ではありません。

だからこそ,『相手に変わってほしいのであれば,こちらが変わる(=自分を高めたり,相手との信頼関係がより厚くなる行動を選択する)ことが効果的である』といえるのです。


したがって,当然ながら,社会的立場を利用して脅すなどして強制的に行動させるというような行為は,完全なる逆効果といえます。

そんな風に恐怖や不安によって強引に行動させられる行為が,長続きしたり,習慣化したりするでしょうか?

自分がそうされる立場になった時を想像すれば容易にわかりますよね?

当然,そのように強制的にさせられた行為が長続きするはずなどありません。

それは,その人が自ら知り,気づき,決意してとった行動ではないからです。

そうすると,怒ったり脅したりすることで相手を動かした場合,一時的には相手を行動させることができたとしても,次に同じような場面が生じたら,また同じことを繰り返す必要が出てきます。

自発的に行動を変えようと思って動いていないので,そのような行動習慣が身につかないからです。

(もちろん,特に子供の場合は,精神が未成熟なこともあり,親や先生,あるいは部活の指導者等から怒られながら行動しているうちに,段々と良い習慣が身についてくるということがないわけではありません。ただし,それは,厳しさの裏にある愛情や思いやりが伝わる関わり方ができている人に限った話であり,例外的と考えた方がよいでしょう。)

怒っている方は,『一度怒って行動を変えさせたのに,なんでまた元に戻ってるんだ!』という苛立ちを感じますし,怒られている方は,『またやりたくないことを無理矢理強制された』と感じてこちらも大きなストレスを抱えることになります。

まさに悪循環といえますね。


ところが,現代社会においては,親や上司が,子供や部下を怒ったり,脅したりして,恐怖を与えて無理矢理一定の行為をさせるということが,いたるところで当たり前に行われています。

これはなぜだと思いますか?

私個人の考えですが,原因は大きく2つあると思います。

1つ目は,前編の投稿や,本投稿で私が説明しているような,「人間に関する原則」を知らず,むしろ原則に反した方法が自分の目的を達成するために効果的であると勘違いしていることです。

子供や部下が自分の言うことを聞かず,こちらが望むような行動ができないのであれば,怒ったり脅したりしてやらせればいいのだ,と考えているタイプがこれに当てはまります。

過去に自分がそういう扱いを受けてきたけど,結局成長して今がある,というようなパラダイムを持っている方にありがちです。


2つ目は,怒ったり脅したりすることが効果的だと思っているわけではないが,人を動かすための効果的な原則に沿って相手の行動変化を促すという,一定の時間を要する上に忍耐力や根気が求められる対応をすることができないので,手っ取り早く一時しのぎができる方法を選択してしまうということです。


端的に言えば,1つ目は,「(原則の存在もしくはその価値を)知らないこと(学んでいないこと)」,2つ目は「即効性を求めてしまうこと」とまとめられるかと思います。


1つ目の原因については,原則の存在を知らないだけなら,本やセミナー等をきっかけにしてそれを知ってくれればいいので,問題解決は比較的早いといえます。

皆さんは本投稿をご覧くださっているので,1つ目は大丈夫ですね(^^)笑


問題は2つ目です。

こちらは,解決が簡単とはいえません。

長期的視点で,即効性を求めずに行動を積み重ねていくという行為には,忍耐力や自制心を必要とするからです。

ですから,2つ目については,このような忍耐力や自制心を頑張って発揮してでも,長期的に効果性の高い関わり方をしたい相手かどうかを考えて,そういう相手にだけ注力するようにすることが大事です

皆さん自身の人生にとって,時間とエネルギー(+場合によってはお金)を投じる価値がある程の重要な関係性を持つ人なのかどうか,という点を考える必要があるということですね。


ただ,通常,『行動を変えてほしい』と強く望む相手がどうでもいい相手であることはまずありません。

家族や親類縁者,もしくは職場やビジネスにおける重要な人間関係であることがほとんどだと思います。

そうであるならば,皆さんが時間とエネルギーを投じる価値はあるはずです。


身近に行動を変えてほしい人がいる方は,ぜひ,「自ら知り,気づいて,決意しない限り人は絶対に変わらない」という原則を頭に置いていただき,相手が知り,気づいて,決意してくれるために自分がどのように行動を変えるべきかを考えてみてくださいね!